開業・起業時に知っておくと得する融資・資金調達の話

創業、起業時の資金調達は、金融機関から融資を引き出したら終わりというわけではありません。

借りたお金は返さなければならないからです。

利益の中から返済し、さらに事業を拡大していくためには、黒字の会社を作る必要があります。

そのためには、お金を分け、記録することが大切です。

このページでは、会計の知識がない人でも簡単にできる、お金が増える帳簿のつけ方について理解することが必要です。

 

目次

黒字体質の会社をつくる

借りたお金は返さなければならない

起業のファイナンスは、融資がおりてからが本番です。

なぜなら、借りたお金は返さなければならないからです。

自己資金と借入金を元手にビジネスを興したら、5年の間に借金を少しずつ返済しながら手元の現金を増やしていきましょう。

自己資金に乏しく、信用力に乏しく、人材もない起業家にとって、最も現実的でリスクの少ない方法といえるでしょう。

多額の借金をすることに躊躇する人も多いかもしれません。

しかし、ビジネスを創るためには資金が必要です。

ホームページ制作やWebコンサルなど、設備投資を必要としない業種でも、まとまった手元資金を持っていなければ成功の確率はかなり低くなります。

自分と家族が当分の間、安心して暮らせるだけの生活費を確保しておかなければ、目先のお金に目がくらみ、一瞬の判断力を失ってしまうのです。

また、起業直後はITを駆使したノマドワーカーを気取っていても、ビジネスが動き出せば優秀な人材を雇ったりオフィスを借りたりするのに、まとまったお金が必要になります。

ビジネスを大きくしたいと考えているのなら、そのスケールに見あった規模の資金が必要になるのです。

 

墨字会社と赤字会社の違いを理解する

成功する起業家が目指すべきは、コンスタントに利益の出る黒字体質の会社をつくりあげることです。

しかし、黒字会社の割合は3割程度です。

この数字を見て、あなたはどのように感じるでしょうか。

がんばっても、どうせ7 割も赤字なのだと諦める人もいるかもしれません。

自分なら絶対に3割の仲間入りができるとやる気の出る人もいるでしょう。

どちらにせよ覚えておいて欲しいのは、どんなに時代が不景気でも業界が不況でも、増収増益を重ねる黒字の会社は必ず存在するということです。

 

黒字会社と赤字会社の違いとは?

黒字会社と赤字会社の違いは簡単なところにあります。

黒字会社の社長は、売上以上の経費を使わないのです。

利益は売上から経費を引いたものなのです。

売上以上に経費をつぎ込んで、赤字になる会社は驚くほどたくさんあります。

経費をつぎ込んでしまう理由として「いくらの経費を使ったから、いくら儲かるはずだ」と考えてしまうことが挙げられます。

広告費を○○円かけた、○○円でホームページをつくった、営業マンを何人雇った、駅のそばに店舗を借りた、だから○○円の売上があがるはずだと考えてしまうのです。

しかし、期待したとおりに売上があがる保証は一切ありません。

どんなに努力しても、売上を自分でコントロールすることはできないのです。

売上の決定権を握っているのは、お客さまであることを忘れないでください。

そして、ここに起業の難しさがあります。

サラリーマンなら働いた労働時間に対する報酬として、給料という収入を得ることができます。

パフォーマンスが悪ければ給料は増えないかもしれませんが、収入がゼロになったり、マイナスになったりすることはありません。

サラリーマンは雇い主である会社と雇用契約を結ぶことで、確実に収入を得ることができるのです。

しかし、起業は違います。

何時間働こうと、いくら経費を使おうと、お客さまから売上の確約を取ることはできません。

なかには、BtoBのビジネスモデルで、主要な取引先から安定的に仕事をもらえるから独立をする人もいるでしょう。

しかし、契約が永遠に続くとは限りません。取引先の業績が悪化すると、すぐに契約を解除される可能性も十分あるのです。

起業したら、誰も会社の売上の保証などしてくれないのです。

 

経費は100%コントロールできる

売上と違い経費は、100%コントロールできます。

だからこそ、「売上一経費=利益」という考え方が大切になります。

創業計画書を作成する段階で、自分の見込み客を想定し売上の予測をしました。

ならば、経費はその予測の範囲内に納めなければならないのです。

どうしても外せない経費もありますが、それも予測しているはずです。

もちろん、予測は予測です。

外れる可能性もあります。だからこそ、創業計画書は丁寧に作成しなければならないのです。

会社を黒字にしている先輩社長は、愚直なまでに顧客のことを考えて売上を予測し、経費をコントロールしています。

 

黒字社長の誰もが実践すること

創業融資制度を利用して、資金を調達したあとは自分で儲ける。

これが、起業を成功させる第一のポイントです。

当たり前のことなのですが、これを実行できる会社はわずか30%しかないというのが現実です。

では、この30%に入るためにはどうすればいいのでしょうか。

自分で儲ける会社になるために、創業計画書の作成が非常に重要です。

しかし、どんなに緻密な計画を立てても、計画通り進むことはほとんどありません。

そこで、お金を分ける、記録をつけるということが重要になります。

この二つが、黒字社長が実践していることなのです。

 

お金に困らない会社をつくる方法

儲かっているのにお金がない理由

儲かっているのにお金がないという問題に、必ずと言っていいほど多くの起業家が直面します。

事業は儲からなければ何もはじまりません。

儲からなければあなた自身の給料も取れないし、借りたお金も返せません。

新規事業に投資をして、事業を拡大することもできません。

しかしそれでも、ビジネスはただ儲けるだけではダメなのです。

例えば次のうち、誰が安定した経営ができると思うでしょうか。

Aさんは年収2,000万円です。しかし、Aさんは金遣いが荒いので、貯金は100万円しかありません。

Bさんは1億円の高級マンションを持っています。しかし、Bさんのマンションは7,000万円に値下がりしており、ローンが8,000万円も残っています。

Cさんは年収600万円で不動産も持っていません。しかし、借金ゼロ、コツコツためた貯金が3,000万円あります。

ほとんどの人が、Cさんが安定していると思うのではないでしょうか。

本当のお金持ちとは、自由に使えるお金をどれだけ持っているかで決まるのです。

 

赤字が続いたからといって会社はつぶれない

どんなに儲かるビジネスをしていても、明日の資金繰りに困るようでは成功者とはいえません。

実は、赤字が続いたからといって、それだけで会社が潰れるわけではありません。

赤字が続けば手元の現金がドンドン目減りしていき、やがては現金が底をついて会社は倒産します。

逆にいえば、どんなに赤字が続いても現金がなくならなければ会社は潰れません。

事業の将来性に期待して出資してくれる投資家がいれば、会社がつぶれることはないのです。

創業から赤字が何年も続いても、事業を拡大し続けるベンチャー企業はたくさんあります。

創業以来7年間赤字続きだったアマゾン・ドット.コムを、株主たちが支援し続けたのは有名な話です。

しかし、アマゾン・ドット・コムの創業者ジェフ・ベゾスのような天才はなかなかいません。

それに日本は、アメリカのようにベンチャー支援が盛んな国でもありません。

そこで、あなたが気をつけなければならないのは、もっと逆説的な話です。

つまり、数字上は儲かっていても、お金がなくなれば会社は潰れるということです。

儲かっているのに、会社がつぶれることを黒字倒産といいます。

めったにあることではありませんが、現実に起こり得ることです。

では、黒字倒産が起こる例を見ていきましょう。

太陽光関連の設備の部品を、受注生産しているA社の場合を考えてみます。

得意先B社がソーラーパネルの一般家庭向け需要を見込んで、5,000万円分の大量発注をかけてきたとします。

A社にとって5,000万円は、昨年度の売上高の3分の2を占める金額です。

A社は大喜びで、注文どおりに部品を作成して納品をすませました。

ところが目論みが外れ、B社は大量の在庫をかかえることになってしまいました。

約束の3カ月をすぎても、さらに6カ月をすぎてもB社から5,000万円の入金がありません。

5,000万円の部品をつくるのに、材料代や人件費など3,000万円の原価がかかっています。

A 社は3,000万円を払うために、新たに高利の借入れをしてしまいました。

3,000万円に対する年利を15%とします。

5年で返済するとして、年間の返済額は元本とあわせると645万円です。

一方で、A社の通常の営業利益率は8%です。

B社以外の取引からあがる利益は150万円しかありません。

8%の利益率で15%の年利を返済できるはずがありません。

最終的に3,000万円の返済ができずに、倒産ということになるのです。

 

上手に資金を回すには公私混同が絶対条件

会社にお金がなくなる理由の一つに、社長が会社のお金を私的に使っていることが挙げられます。

自分は公私混同をするつもりはないから心配無用だ、という方が多いと思いますが現実はなかなか上手くいかないものです。

株主でもあり経営者でもある起業家が、公私混同せずに事業を営むのは不可能ともいえるのです。

例えば、会社の携帯を私用で使っていないでしょうか。

個人のカードで接待費を払っていないでしょうか。

これらは、小さな会社では日常的に起きる公私混同です。サラリーマンでは、決してあり得ないことです。

上場企業の代表取締役や、大口株主からの出資で起業した雇われ社長の場合、許されない公私混同です。

しかし、公私混同をしてはいけないと言っているわけではありません。

むしろ起業家のあなたが、少ない元手で上手に資金を回していくためには、公私混同こそ必要なやりくりだったりします。

事務所を借りるのはもったいないから自宅で事務をする。

個人で契約したサーバーを使ってメールを打つ。

このような公私混同は、上手く処理すれば資金の節約や節税になります。

しかしこの公私混同は、諸刃の剣ともいえます。

一歩間違えれば、会社のキャッシュがダダ漏れする原因となってしまうのです。

儲かっているのになぜか会社にお金がない、最大の原因も公私混同によるものです。

起業における小さな公私混同はその自覚がないため、キャッシュが不足する原因を究明することもできないという状況に陥ってしまうおそれがあります。

 

記録することからはじめる

このような悩みを、一気に解決する方法があります。

それは、会社が行う日々の取引をすべて記録することです。

会社の取引をすべて記録することを、帳簿をつけるといいます。

また、帳簿をつけることを「記帳」といいます。

起業家とサラリーマンの違いは、会社のお金を自分で管理しなければならないということです。

会社は最低でも1年に1度、いくら儲かったか、いくら税金を支払うか計算して、会社の所在地の税務署や地方自治体に申告しなければなりません。

サラリーマンは勤務している会社が税金の計算をしてくれますが、起業したからにはすべて自分で行うことになります。

帳簿の作成は、決算・申告の基本です。

個人事業を営む場合も、3月15日までに確定申告するためには、日ごろから帳簿をつけて、いくら儲かったのかを記録しておく必用があります。

起業した以上、帳簿をつけるという作業から逃れることはできません。

どうせやらなければならない事務作業なら、お金に困らない会社にするために積極的に活用しましょう。

それが、成功する起業家の最初の一歩です。

 

日々のお金の動きを記録する本当のメリット

起業家の多くは帳簿が苦手です。

申告期限ぎりぎりまで放置して、最後の最後に会計事務所に駆け込み、何とか税金の申告だけやってもらう人も少なくありません。

しかし、会社の日々の取引を記録しておかなければ、どこに会社のお金が消えたのか、儲かっているはずなのに預金が増えない理由がまったく分かりません。

お金に困らない体質の会社をつくりたくても、お金がショートする原因がわからなければ対策ができないのです。

また、日々のお金の動きを記録するメリットは、資金ショートの原因究明だけではありません。

実は、お金の流れを習慣的に記録するだけで、会社のキャッシュは自然と増えていきます。

これはダイエットと似ています。

毎日の体重を記録するダイエットは、記録することで自然と摂取カロリーに注意するようになります。

また、体重が減っていく様子を可視化できるので、ダイエット効果が高いといわれています。

記帳も同じです。お金の動きを記録することで、自然と無駄なお金に注意するようになります。

また、通帳の残高が増えるのを見るのが楽しくなってくるのです。

 

お金に色をつけて資金を管理する

簿記なんか知らなくてもお金に色をつければ大丈夫

簿記に詳しいという起業家の方はほとんどいないでしょう。

簿記には「借方」や「貸方」など、日常生活ではまず出てこない専門用語が使われます。

これらの用語を見ても、何のことか分からない人のほうが多いかもしれません。でも大丈夫です。

簿記を知らない起業家でも、簡単に記帳する秘訣があります。

それは、「お金に色をつける」という方法です。

起業して会社を設立したからには、会社のお金を私的な目的では使うことはできません。

会社から役員報酬をもらい、個人の生活費はその報酬の範囲内で賄う必要があるのです。

個人事業者として起業した場合は、法的にはプライベートのお金と事業用のお金を分ける必要はありません。

しかし生活費と事業用の資金を区別して管理しないと、預金に残高があるからと思い大きな買い物をした後、仕入先から多額の請求が届いて大慌てなんて事態になりかねません。

来月の支払いに充てるキャッシュがいくらかわからない状態を、「どんぶり勘定」といいます。

毎月、月末になると金策に走り回っているようでは、社長本来の仕事である儲けるための経営戦略を立てることもできません。

起業を成功に導くためには、プライベートのお金と事業用のお金に色をつけて管理することが、必要不可欠なのです。

 

銀行口座を3つは持っておく

株主と役員が同じ場合や、役員全員が家族というような小さな会社の場合、個人のお金と会社のお金を分けて管理するのは非常に大変です。

会社をつくったら、会社の通帳と個人の通帳を分けて持つのは当然ですが、個人事業の場合でも、プライベートとは別に事業用の銀行口座を最低でも2つは持ちましょう。

銀行口座を2種類持つ理由は、入金用と支払用に分けることで、通帳を帳簿代わりに利用できるためです。

 

売上金には一切手をつけない

まず、入金用の口座を開設します。

売上金のすべてが振込の人は、取引先に入金用口座の口座番号を知らせるだけで売上を銀行が記帳してくれます。

会社の規模が小さいうちは、請求書に記載する振込先は1つあれば十分です。

その際は取引先が振込しやすいように、都市銀行など大手の銀行に口座を開設しておくとよいでしょう。

入金口座は都市銀行、支払口座は地元の信用金庫などと取引すると便利がよいかと思います。

また、取引先が地元の会社にかぎられるなら、地銀のほうが便利なケースも考えられます。

どこの銀行と取引するかは、目的や事業形態を考えて、臨機応変に決定しましょう。

飲食店のようにそもそも現金取引がメインの人や、売上金は振込と現金の両方で回収するという会社の場合、日々の売上金を入金用口座に定期的に預け入れます。

このときのポイントは、売上金には一切手をつけずにそのままの金額で入金するということです。

現金で回収した売上金を、たまたまやってきた宅急便の支払いに当てるようなことをしては絶対にいけません。

売上金に手をつけず入金すれば、それがイコール会社の売上高になります。

預け入れの都度、預金通帳の余白に売上先の名前や売り上げた日にちを書いておけば、預金通帳が売上帳に早変わりします。

記帳といっても、会社の規模が小さいうちはそれで十分です。

 

あらゆる支払いを口座引き落としにする

次に、支払用の銀行口座を開設します。

家賃や駐車場、リース料、コピーのカウンター料金、サーバー使用料、電気代、ガス代、水道代、電話代(固定電話・携帯電話)、自動車税など各種税金、仕入代金など、あらゆる支払いを口座引き落としで行うよう手続きしましょう。

最近では様々な料金が、コンビニに行ったついでに簡単に支払えるようになっていますが、起業家はそんなことをしてはいけません。

預金通帳を、いかに会社の帳簿代わりに利用するかが重要になります。

通帳を記帳するだけで、あなたの会社の経費の合計額がわかるようになれば記帳はかなり楽になります。

起業して間もないころは、自宅兼事務所で仕事をしていて、家賃や水道光熱費は個人と会社が共有で使っている方も多いかと思います。

その場合は、原則としてまずそれぞれの契約を会社名義に変更し、会社の支払用口座から自動引き落としの手続きを取ります。

いったん全額を会社の経費として処理したあとで、支払額のうち個人の利用分を役員報酬から天引きして返金すればよいのです。

一見面倒に思えますが、会社主導にしておけば毎月の固定費の管理が一元化できて楽になります。

また、将来の税務調査で否認されにくいというメリットもあります。

そして、口座からの支払いはインターネット・バンキングを利用するようにします。

インターネット・バンキングを利用すれば、忙しい業務の合間を縫って24時間いつでも自宅からでも振込ができます。

また、振込データをCSVで吐き出すことができるので、会計ソフトへ入力する手間を省けるというメリットもあります。

インターネット・バンキングは、パソコンや銀行の窓口で簡単に申し込むことができます。

 

口座を分ければ資金繰りもできる

入金口座と支払口座を分けるメリットは他にもあります。

毎月決まった日に、入金口座から支払口座に必要資金を送金することで、資金繰りを可視化することができるのです。

あたりまえですが、入金額よりも支払額のほうが多ければ、資金がショートします。

そうなると、不足資金をどこからか捻出してくるか、翌月からコスト削減の努力をする必要が生まれます。

このとき、支払金額にプライベートな出金が混じっていると、資金ショートに対する危機感が生まれません。

業務で支払うべき金額が、売上の範囲内で賄えないという現実を突きつけられれば、イヤでも社長のコスト意識は高まるのです。

 

財布を2つ持つ

可能な限り預金口座を通して取引すれば、帳簿づけの負担はかなり軽減されます。

カウネットやアスクルなど通販の会社を利用すれば、小さな会社でも、文房具などの消耗品は信用取引を行うことが可能です。

信用取引とは、品物の納品時には支払いをしないで、1カ月分の請求書に基づいて後で支払うことです。

信用取引と自動引き落としを併用すれば、ボールペンを1箱買っただけでも、通帳が取引の記録を保存してくれるのです。

ひと月の間に何度も取引する場合は、相手先ごとに納品書や請求書を保存しておけば十分です。

それでも現実には、コンビニの買い物やファミレスの食事代を現金で支払うこともあるでしょう。

すべての営業活動を、100%銀行口座を通して行うことは不可能です。

では現金払いの場合は、どのようにして、プライベートと会社のお金に色をつければいいのでしょうか?

その方法は、個人の財布と会社の財布を2つ持つことです。

銀行口座を別々に持つように、財布も分けて管理しましょう。

 

事業の支払いをするときのルール

事業の支払いをするときは、まず会社用の財布から支払いをし、もらった領収書も会社の財布に入れて保管します。

そして、領収書が溜まったら合計金額を会社の預金通帳から引き出します。

さらに、その内訳をエクセルなどで記帳しておきます。

このルールを守ることで、通帳から引き出された金額は、必ず会社の経費に使ったという信頼性が保てるようになります。

特に現金は、証拠が残らないので公私混同してしまいがちになります。

つまり、社長であるあなたの心構えが大切になってくるのです。

このとき重要となるのが、使う前に大体このくらい必要だからといって前金でお金を引き出したり、使ったあと丸い数字で引き出したりしないということです。

丸い数字とは、四捨五入したきれいな数字です。

つまり、使った金額が9,854円だからといって、1万円を引き出したりしてはいけないということです。

実際に使った領収書の合計額を、きっちり会社の口座から引き出しましょう。

そうしないと、通帳から引き出された1万円の正確な使い道がわからなくなります。

残り146円は社長がプライベートに使ったのかもしれないし、会社の経費として何か別のものに使ったかもしれません。

または使わずに、社長の財布に残っているかもしれません。

専属の経理スタッフがいて帳簿をきっちりつけている会社なら、丸めた金額で入出金するやり方でも大丈夫です。

しかし、簿記の苦手な起業家にお勧めできる方法ではありません。

 

カードを2枚持つ

財布を2つ持つのは面倒だと思う人もいるかと思います。

そのような人は、個人のカードとは別に法人用のクレジットカードをつくりましょう。

私的な支払いはプライベート用のカードを使い、事業用の経費はすべて法人カードで支払います。

法人カードを利用すると、カード会社が明細書を発行してくれるので、記帳が劇的に簡単になります。

毎月カード会社から送られてくる明細書の余白に、購入したものなどをメモしておけば、カード明細が立派な経費帳になるのです。

また月に1度、カード決済のために、入金口座から資金移動をする必要が生まれます。

このとき、預金口座を分けたときと同じような、コスト意識が生まれるという効果もあります。

 

法人カードがつくれなかったときの裏技

法人カードは、起業家の記帳問題を一気に解決する切り札といえます。

しかし、法人カードにも問題点があります。

それは最近、法人カードの審査が厳しいということです。

特に起業家して間もない頃は、会社の実績がないので、個人の財産や借金の状況を調査されたり、会社の事業計画の提出を求められたり、提出書類が多く個人カードのように簡単につくることができません。

審査に時間がかかるだけでなく、場合によっては書類審査の結果、申請が却下されるケースもあるのです。

でもあきらめる必要はありません。

法人カードが作れなくても、個人名義のクレジットカードを1枚、会社用カードとみなして利用すればいいのです。

問題は個人名義のカードなので、会社の口座から引き落としができないということです。

この問題を解決するためには、カード専用の個人名義の引き落とし口座を1つ用意します。

この口座には、プライベートの入出金は一切行わないようにし、名義は個人でも会社の銀行口座として決算書に計上すれば、立派な法人口座になるのです。

税務署は名義主義をとっているので、カードや預金口座の名義は大事なポイントとなります。

しかし一方で、実質主義も認めています。

名義が個人でも、実質的に会社が管理していて、実際に会社の取引で使われているのなら会社の財産としてみなされます。

そのため、法人カードをつくった場合と同じ効果が得られるのです。

ただしこの場合名義が個人となるので、個人と会社の支払いを混同しないよう、より一層注意しなければなりません。

名義は個人だけど、実質は会社という状況が崩れると、税務署から費用性を怪しまれてしまいます。

さらに、個人と会社のお金を分けてお金に困らない体質の会社にする、という本来の目的の達成は難しくなるでしょう。

 

お金の動きを記録する

お金の動きを可視化する

会社をつくったら、営業から広報、総務や経理の業務まで、社長であるあなたがすべてを行うことになります。

起業家の多くは、営業は得意でも経理のように数字を扱う仕事は苦手です。

特に、会計の専門知識が必要な記帳はハードルの高い仕事です。

しかし、正確でタイムリーな会計処理ができないと、会社の経営判断を間違うおそれがあります。

必要な資金を必要なときに調達できず、毎月、資金繰りに追われる会社になってしまうかもしれません。

お金で困らない会社になるためには、お金の動きを記録することが絶対に必要なのです。

記録しなければ、お金がどこに消えたのか分かりません。

すると、資金がショートする原因を改善することがでないのです。

また、お金の増減を可視化することでコスト意識が高まります。

コスト意識が高まると、自然とキャッシュが増えるという副次的な効果も期待できます。

取引数の少ない起業直後こそ、経理の基礎を固めるチャンスなのです。

 

視覚的・感覚的に会社の経営状況をとらえる

数字が苦手な社長は、できるだけ簡単に帳簿がつけられるよう、まず会社のお金に色をつけましょう。

お金を分けて管理すれば、預金通帳やカードの明細が帳簿の代わりになるからです。

また、お金を分けて管理することで感覚的に経営状態が分かります。

例えば、入金口座の残高が前月より少なければ、直感的に売上が減ったことがわかります。

売上が減っていないのに、入金口座の残高が少ない場合は、支払口座への資金移動が増えたので、何か大きな支払いをしていることになります。

増加した支払いを分析すれば、今後の対策ができるのです。

ひとつの銀行口座ですべての入出金を管理しえいる場合、たくさんの種類の帳簿をつくらなければ、会社の経営状況を数字上で追いかけることができません。

簿記を知らない起業家は、視覚的・感覚的に会社の経営状況をとらえられる、仕組みを作ることが大切なのです。

 

賢い会計ソフトの選び方

会社のお金に色をつけたら、いよいよお金の動きを記録していきます。

会社が行うすべての営業活動を、お金という単位で記録することを「記帳」といいます。

最近では比較的安価な会計ソフトもたくさんあり、それを使えば簡単に帳簿を作成できます。

会計ソフトとは、領収書や通帳などのデータを入力して決算書を作成する作業を、パソコンで行うことができるツールです。

市販されているほとんどの会計ソフトは、専門的な簿記の知識がなくても、画面の指示どおりに日付や金額を入力するだけで自動的に複式簿記の仕訳を行うことができます。

また、月ごとの試算表や決算書も作成できるしくみになっています。

ソフト会社は違っても似たような機能を備えており、価格の高低による大きな違いはほとんどありません。

会計ソフトを選ぶ時は、ソフトとしての機能よりも、あなたのITリテラシーや、簿記の知識の有無がポイントとなります。

また、会計事務所に顧問を依頼する場合は会計事務所との互換性も必要です。会計ソフトは値段が高いものが、操作性がよいとはかぎりません。

簿記の知識がある人向けに作られたものか、素人用に作られたものかにより、操作性が異なるのです。

値段の違いは、操作性よりも機能性や拡張性の違いと考えたほうがよいでしょう。

このように、会計ソフトを単なる税金を計算するためのツールと捉えるか、経営分析や営業会議のデータづくりまで活用するかで、求められる機能も変わってきます。

高価なソフトになるほど、プロジェクトごとに損益を管理できる、支店間のネットワーク対応が簡単にできる、他のソフトやアプリとの連携が容易にできる、自社独自の資料をつくるためのカスタマイズが簡単にできるなど、活用の幅が広がります。

その時、電話による相談対応など、サポートの充実度も選ぶ基準のひとつです。

最近では、ネット上のカード明細や通帳の入出金データを読み込み、自動的に仕訳してくれるクラウド型の会計ソフトも登場しています。

スタートアップしたばかりで事務スタッフを雇う余裕がない、簿記のことはまったくわからないけれどITスキルならあるという人はこちらの活用も検討してみましょう。

ほとんどのソフト会社で、期間限定の無料版をダウンロードできます。

起業したらできるだけ早い段階でサンプル版をインストールし、実際に体験してみることをおすすめします。

 

会計ソフトは怖くない

スタートアップの頃は、簿記の本に書いてあるからといって、出金伝票や入金伝票などを作成する必要はありません。

預金通帳やカード会社の明細書から、直接パソコンに打ち込んでいけば十分です。

飲食代などを現金で支払った場合は、領収書を見ながら入力します。

少しパソコンに強い人なら、現金で支払った経費をエクセルで一覧表にしておき、CSV形式に変換して、会計ソフトに取り込む方法がおすすめです。

いつも使っているExcelに打ち込むだけなので、簿記の専門用語を知らなくても、効率的に会計帳簿を作成することができます。

それすら面倒だという人は、freeeやMFクラウド会計など、自動仕訳してくれるクラウド型の会計ソフトを使うとよいでしょう。

これらの会計ソフトは、銀行の口座番号やカード会社の番号を登録するだけで、ネット上の情報を取り込んでくれます。

また、同じ取引が続く場合は、ソフトが過去の仕訳を記憶して自動的に同じ仕訳をしてくれる便利な機能もついています。

管理会計が必要な大規模な会社には向きませんが、従業員10人までの小さな会社にとっては力強い味方といえます。

 

勘定科目はわかりやすいものを作ってもよい

会計ソフトへの入力時、簿記の知識がない人は、どの勘定科目を使うかが不安かもしれません。

しかし、何も心配する必要はありません。

なぜなら、勘定科目の使い方を取り決めた法律は存在しないからです。

会社がどういう取引をしたら、どの勘定科目を使わなければならないという決まりはありません。

会計ソフトと一緒に、勘定科目の本を買って勉強する人もいます。

しかし、素人が勘定科目にこだわると、本に書いてあるとおりにしなければならないと勘違いして、逆に入力を難しくしてしまいます。

簿記の世界では、60年以上も前につくられた勘定科目の体系が、今でもそのまま使われています。

あなたは、別に経理の専門家を目指しているわけではありません。

難しい勘定科目の違いに、頭を悩ませる時間は無駄とも言えるでしょう。

電車に乗ったら「交通費」、携帯電話代は「通信費」など、あなたの常識の範囲内で入力すればそれでいいのです。

それでも分かりにくいという人は、科目名を分かりやすい日常用語に置き換えてしまいましょう。

電車に乗ったら「電車代」、携帯電話は「電話代」という勘定科目を作っても問題はないのです。

わかりやすい勘定科目を使ったからといって、どこからもペナルティがあるわけではありません。

これから会社を経営していくうえで大事なことは、見栄えのよい帳簿をつくることではありません。

会社が今いくら儲かっているのか、お金の動きにムダがないかをタイムリーに把握することです。

合理的に考えて、無駄な動きをしないことが、ヒト・モノ・カネに乏しい起業を成功させる秘訣ともいえます。

 

 創業時は、お金の流れを理解することが重要です

このように、帳簿をしっかりとつけお金の流れを把握することが、会社を経営するうえでは非常に重要となります。

しかし、毎日仕事を忙しく進めていると、つい経費の処理を忘れてしまいがちになります。

これが重なると、どんどん会社のお金を把握できなくなってしまうのです。

お金の流れを把握しなくては、企業で成功することは出来ないと言っても過言ではありません。

確かに慣れていないと難しいこともあるかもしれませんが、自分の会社の発展のためと思って取り組んでください。

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この記事を書いた人

福岡市にある中小企業経営支援センターでは、助成金申請代行の専門家が御社の助成金申請を代行しています。

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