希望通りの創業融資を受けるためには、「創業計画書」「自己資本」「社長面接」の3つのポイントを押さえる必要があります。
この3つの中で特に重要となるのは、創業計画書です。
このページでは、最も大事な創業計画書の書き方について解説していきます。
創業計画書は、金融機関から融資を引き出すためだけに作成するものではありません。
あなたの事業を成功に導く道標となる大切なステップになります。
必要書類の揃え方
必要書類は大きく分けて三種類
融資に必要な書類については、この書類さえあれば審査をクリアできるというものはありません。
融資の申し込みまでにそろえておきたい書類は、以下の3種類があります。
・申し込み時に必ず必要な書類
・必要に応じて提出を求められる書類
・提出しておくと審査に有利になる書類
提出する書類は、多すぎることはありません。
少しでも審査が有利になると思われるものは、積極的に提出するようにしましょう。
原本は関係各所のサイトからダウンロードする
最近ではほとんどの書類が、インターネットからダウンロードできるようになっています。
関係各所のサイトを訪れ入手しましょう。
しかし中には、役所の窓口に直接出向かなければ取得できないものもあります。
また、取引先や相手先に依頼しないと用意できないものもあるので、早めに準備するようにしましょう。
事業にかけるあなたの想いを伝える
創業の目的と動機を聞かれる理由
創業の目的や動機には、あなたの事業にかける想いが込められている必要があります。
起業の理由は、人それぞれです。
すべての起業家が自分の夢をかなえたいとか、社会の役に立ちたいとか立派な理想を持っているわけでもありません。
単に儲かりたいとか、勤めていた会社の将来性に悲観したからという人もいるでしょう。
しかし、星の数ほどある事業の中から、起業する事業を選んだ理由は必ずあるはずです。
事業は1年や2年の短いスパンで完結するものではありません。
10年、20年と長期間にわたって継続する中で雇用を生み出す、インフラを整える、税金を払う、などなど社会に新しい価値を生み出しながら、同時に利益を追求し続けていくものです。
しかし、事業を継続するのは口でいうほど簡単なことではありません。
ツラいときや困難にぶつかるときの方が、もしかしたら多いかもしれません。
そんな時、創業の目的や動機こそが、死に物狂いで頑張る理由を思い出させてくれるのです。
金融機関もそれを分かっているからこそ、創業計画書の最初の質問項目に挙げているのです。
ここからは「創業の目的」と「創業の動機」に分けて考えていきましょう。
創業の動機に書くべきこと
まず「創業の動機」について考えていきましょう。
創業の動機では、事業にかける強い信念をアピールしていきます。
信念とは、その事業を通して社会をどのように変えたいのかということです。
社会を変えるなんて自分にそんな大それたことはできない、と考えてはいけません。
あなたが起業する前に、あなたの事業は世界に存在していないのです。
例えば、飲食店をオープンするとします。お店をオープンする前、周辺に飲食店は存在していません。
近隣の人は、たまには外食したいと思っても、近所に美味しいお店がないのでわざわざ遠くまで出かけるか、外食をあきらめていたかもしれません。飲食店をオープンすることで、世界は少しだけ、しかし確実に変化を遂げるのです。
ミッションこそ創業の動機
ビジネスとは、あなたの想いを利益に変える経済活動です。
そのため創業の動機は、あなたがこの社会で果たすべき役割、「ミッション」と言い換えてもいいかと思います。
ミッションとは、あなたに与えられた使命、あなたがその事業をはじめる理由、あなたが困難を乗り越えてつき進むためのエネルギーの源泉なのです。
新商品を開発する、店舗を借りる、従業員を雇う、銀行からお金を借りるなど、会社を経営するということは判断と選択の連続です。
選択とは何かを選ぶことであり、同時に何かを切り捨てることを意味します。
これは、大変勇気のいることです。
選んだものにより、業績が大きく好転することもあるでしょう。
逆に、切り捨てたところにビジネスチャンスがあったかもしれません。選択により、未来は大きく変わるのです。
しかし、自分のミッションを明確にしておけば、社長としての経営判断に迷うことはなくなります。
経営者が犯す過ちの多くは、ミッションよりも目先の利益を優先してしまうことに原因があるのです。
創業の目的に書くべきこと
創業の動機をスタートとすると、創業の目的はゴールです。
すべての事業は、あなたの想いからはじまります。想いは主観ですが、その結果世界をどのように変えたいかという目的は客観です。
あなたがどこに向かっているか、目指す中長期的なゴールがどこかを具体的に表したものが「創業の目的」になります。
創業の目的は、事業ビジョンと言い換えることもできるでしょう。
事業ビジョンが明確になっていると、会社内外の関係者はもちろん、金融関係者の共感まで得ることができます。
社内の人間だけでなく、下請け業者など外部の関係者も、その商品やサービスを売る喜びを見出せるようなビジョンを掲げましょう。
創業の目的はお客さまにあり
創業の目的を決めるとき、忘れてはならないのがお客さまの存在です。
どんなに素晴らしいビジョンを掲げても、想いがお客さまに届かなければ、商品やサービスを買っていただくことはできないのです。
近年のようにモノがあふれている時代には、人々は本当に必要なものしか買いません。
自分にとって価値があるものに対してしか、お金を使わないのです。
そのため、あなたの事業がお客さまにとって、どのような価値があるのか考える必用があります。
お客さまは、あなたが提供する商品やサービスに何を期待しているのか、商品やサービスを利用するとき何を感じどのような反応を示すのか、商品やサービスを利用したあとどのように変化するのか、などといったことをじっくりと考えてみてください。
お客さまの思考回路や行動パターンを把握する
お客さまが期待する価値を理解できていない場合、あなたがどんなに優れた技術や商品を持っていても、独りよがりの創業計画に終わってしまいます。
商品が世界で唯一のオンリーワンでないかぎり、市場にはたくさんの類似品や代替品が出回っているのです。
例えばどこの繁華街にも、似たような店構えの飲食店が立ち並んでいます。
どの店も美味しい料理を提供していることでしょう。
値段もそんなに変わりません。それでも人々はA店やB店でなく、確実にC店を選ぶのです。
その理由を考えなくてはならないのです。
数多くの商品の中からお客さまに選んでもらうためには、その商品を好きだと思ってもらわなければなりません。
デザインがかわいい、色がキレイ、美味しそうに見える、ネーミングがかっこいいなどといった感性は、時として人々の購買行動に決定的な影響を与えます。
商品を選ぶ基準は、値段や品質などの具体的なスペックよりも、何となく好きというあいまいであやふやな根拠に基づいているのです。
例えばiPhoneのユーザーは、バージョンがアップされる度に、機種を買い替えることで有名です。
アンドロイドの方に機能的に優れている点がたくさんあったとしても、iPhoneから買い換えることはないでしょう。
アップルを再建するために会社に戻ったジョブズは「Macのユーザーは、ちょっと変わった人、世界を変えたいと思っている人だ。
そういう人を満足させるために、Macの商品はセクシーでなくちゃいけないんだ」こう言ってiMacを開発しました。
どんなに優れた商品を開発しても、あなたの会社が嫌いな人はその商品を欲しがりません。
一方通行の片思いでは、商品は売れないのです。
事業を行う必然性を考える
創業する事業の経験を聞かれる理由
金融機関は、事業を行う必然性を知りたがっています。
今まで包丁も握ったことがない人が、飲食店をやるといっても無理があるのです。
日本政策金融公庫の「新創業融資」では、同様の業務に6年間以上携わったかどうかも融資の要件の一つとなっています。
有利な融資を引き出すためには、過去の経験も重要な要素になるのです。
創業計画書は就職活動における履歴書のようなもの
入社したい会社に履歴書を書くとしたら、あなたはどうするでしょうか?
おそらく自分の経歴やスキルを入社したい会社の業務に関連させ、面接官に自分をアピールする工夫をすると思います。
実は創業計画書もこれと同じです。
過去に携わってきた業務内容や実績はもちろん、これからはじめる事業に関連する経験やノウハウ、スキルをどれだけ持っているかなど、その事業に対するあなたの強みを最大限アピールしましょう。
しかし、自分の強みというのは、自分ではなかなか客観的に見つけることができません。
自分でできることは日ごろ意識しないので、あたりまえだと思ってしまうのです。
そこでまずは、第三者目線で1度自分の経歴を見直してみましよう。
過去の経験を棚卸しすることは、あなたの強みを際立たせるためにも重要なプロセスです。
強みの見つけ方
起業を成功させるためには、以下で説明する3つの能力が必要となります。
この中から、あなた独自の強みを見つけてみましょう。
①仕事を遂行するための技術力
技術とは、特許権などの知的財産、他社よりも質の高い製品をつくれるか、他社より美しい商品がつくれるかなど、品質に関する能力のことを指します。
世界のモノづくりの現場では、既存の素材に新しい加工技術を組みあわせ、まったく新しいデザインを生み出すことで消費者の心を捉えようとしています。
日本はものづくり大国です。
ほかの誰にも負けない技術が、まだまだ埋もれているに違いありません。
②他者には真似のできないスキル
スキルとは、これまでの実務経験を通すなどして、努力し身につけてきた能力のことを指します。
例えば、コミュニケーション能力、営業力や交渉力、クロージング能力、ネットワークをつくる力、部下を管理する能力、情報収集能力や処理能力または情報管理能力、ITスキル、企画力やプレゼン能力などが挙げられます。
これは目には見えませんが、ほかの誰にも真似することのできないあなたに固有のスキルです。
③経験則の中で蓄積した無形のノウハウ
ノウハウとは、これまでの積み重ねで取得したメソッドや、試行錯誤を通して学習してきた経験値のことです。
資材の調達ルート、品質管理の方法、新規顧客の開拓やリピート客を確保する方法、広告宣伝の知識、資金調達の方法、経営能力など、あなた独自の強みが生きる分野です。
過去の実績は成功することを示す証拠になる
過去に実績のある事業を行う場合のほうが、未知の分野で起業するよりも成功率が高いと誰もが思うでしょう。
過去にも同様の事業を成功させたことがある場合は、実績を強調して自分がこの事業を推進するのにふさわしい人間であると印象づけましょう。
過去の実績としては、これまで達成した売上成績や業績の他に、獲得してきた無形の財産も挙げられます。
例えば知名度やブランドカ、蓄積してきた調査研究のデータ、顧客リスト、外注先リストなどをリストアップし、提示しましょう。
経験値のない分野での起業は何をアピールする?
では、これまでの事業とまったく違う分野で活躍していた場合、過去の経験はどのように記載すればいいのでしょうか?
例えば、美大で油絵を習っていた学生が、商社で営業職に応募するとします。
美大の学生だったからこそ、経済学部では学べなかった斬新な感性や、他人とは違う視点から物ごとの本質を捉えるスキルが身についているなどとアピールすることができるでしょう。
新規事業に役立つスキルやノウ八ウがないかという視点で、自分の経歴を見直して見ましょう。
経営者として必要な他人を引きつける人間力
金融機関は、経営者としてのあなたの資質にも関心を持っています。
あなたが生まれつき持っている能力にプラスして、あなたが理想とする価値観や世界観、信念を貫く強い心、向上心や人の心をつかむリーダーとしての資質などをアピールしましょう。
例えば飲食店をオープンする場合、美味しい料理さえ出していればお店が繁盛するほど、飲食店の経営は甘くありません。
マーケティングの知識や情報処理能力、時代の流れを読む力やスタッフをマネジメントする能力も必要になります。
これらの力を持ち合わせておけば、安定した経営が可能となります。
人間力を持ち合わせた人物と理解してもらうことができれば、金融機関も安心するでしょう。
何を売ろうとしているのかきちんと把握する
起業に最も大切なものとは?
ビジネスの経営資源は、ヒト・モノ・カネといわれます。
この中でも、起業する際に最も重要となるのが「モノ=商品」です。予算にかぎりのある起業の場合には、商品やサービスの良し悪しが事業成否のカギを握るといっても過言ではありません。
もちろんビジネスを動かしているのはヒトなので、優秀なスタッフや営業マンなど人材は大切な要素です。
また資産を購入したり、広告を打ったり、事業をスタートさせるためには、初期投資のおカネも必要です。
しかし現在のように、モノも情報も溢れている状況では、優れた商品に勝る販促ツールはありません。
優れた商品があれば、インターネットやSNSで商品の評判を広めてもらうことができるのです。
CoCo壱番屋も、操業当初はヒトもカネもありませんでした。
そこで徹底的に「モノ」にこだわったのです。そのこだわりとは、バリエーション豊かなカレーのメニューと笑顔でした。
残念ながらスタートアップの企業では、大企業のように優秀な人材を集めることができません。
不特定多数の投資家から、資金を調達することもできません。
起業で成功するためには、徹底的に「モノ」にこだわるしかないのです。
取扱商品・サービスに書くべきこと
複数の商品を扱う場合、創業計画書に記載する「取扱商品・サービス」には、売上に占める比重が高いものから順番に挙げていきます。
これから起業する人や起業して間もない人は、まだ実績がないので見込みでもかまいません。
ここに記載すべき内容は、商品・サービスの名前、商品・サービスの内容、商品・サービスの値段の3つです。
それぞれ詳しく見て生きましょう。
①商品・サービスの名前
商品名やブランド名は、お客さまの購買動機に大きな影響を与えます。
名は体を表すという言葉があるように、名前を聞いただけで商品やサービスの特徴を連想できるネーミングを考えることが重要になります。
マーケットに商品が溢れる現代では、消費者は何を基準に商品やサービスを選択すればいいのか判断ができなくなっています。
すると、自分で判断しないという選択肢を選ぶようになってしまうのです。
判断できないと思っているお客さまに対しては、ネーミングで他社と差をつけるのが、コストもかからない最も効果的な方法となります。
②商品・サービスの内容
商品・サービスの内容を記載するには、まず、誰に、何を、どうやって売るのかを考えます。
まずは、Who、What、Howの3つの要素を書き出してみましよう。
Whoはあなたの商品を買ってメリットを受けるのは誰か、Whatはそのターゲットに対してどんなメリットを提供するか、Howはどうすればお客さまにそのメリットを甘受してもらえるか、ということを具体的に考えます。
金融機関にあなたの商品が、売れる商品であることをアピールするためには、ただ単に商品の形状や仕様、性能、産地など、目に見えるスペックを記載するだけでは不十分です。
商品がお客さまに与えるメリットには、これらの物質的なメリット以外にも、商品が内包している目に見えないメリットと、商品に付随して発生するメリットがあります。
商品が内包している目に見えないメリットとは、お客さまが無意識に選別の根拠にしている、商品に内在する本質的な価値のことです。
お客さまの感性や嗜好に訴えかけるもので、商品のコピーやパッケージ、デザインやロゴなどによっても影響を受けます。
商品に付随して発生するメリットとは、商品が本来持っている価値そのものではなく、あとから付加される便益やサービスが該当します。
例えば、無償のアフターサービスや、お客さま同士のコミュニティなどがこれに当たります。
③商品・サービスの値段
値段はお客さまが商品やサービスを購入する際、最も大きな影響を与えます。
起業する際はまず始めに、これから提供する商品が低価格なのか高価格なのかという方向性を決める必要があります。
この最初の一歩を間違えると、その後の販売戦略がすべてちぐはぐなものになってしまうのです。
高価格戦略を取るなら、いかに商品の付加価値を上げるかが最重要課題となります。
一方、低価格商品で勝負をするなら、最低限の品質を維持しながら安い商品を提供する、システムを構築することが最重要課題です。
価格戦略が決まったら、商品・サービスの値段を決定します。
起業家にとって、値段の決定は大変勇気のいる決断です。
ビジネスとは、お客さまがあなたの提供する価値に見あう対価を支払う経済行為です。
設定する対価が高すぎると他社に対する競争力を失い、低すぎると自社の利益を損ねてしまいます。
では、値段はどのように決定すればよいでしょうか。
ここからは、値段の決め方について解説していきましょう。
まず始めに考えるべきことは、商品の仕入れや製造、販売にかかるコストです。
必要なコストを積み上げていき、あなた自身の利益を乗せて値段を決定します。
コストを計算するときは、仕入れ・製造コストだけでなく、管理費や広告宣伝費などの販売コスト、お客さまに商品を届けるまでの物流コストまで含めて多角的に考えます。
ただしこれだけで考えると、競合他社に比べて値段が高くなりがちになります。
商品によほどの独自性がないと、価格競争で負けてしまうでしょう。
そこで次に考えるのが、同業他社の類似商品との価格の比較です。
値段以外で他社との差別化を図るのが難しい商品や、すでに低価格の類似商品が市場に出回っている場合には、徹底した合理化でコストダウンを図らなければなりません。
この場合、価格競争に巻き込まれ自社の利益を確保しづらくなるおそれがあります。
最後はお客さまのコストに着目します。
マーケットには、常に自社と他社そしてお客さまが存在します。
あなたが売りたい商品の値段は、お客さまの立場で考えたら「コスト」になります。
そこで、もし自分がお客様ならこの値段で買うだろうかということを考え値段を決定します。
以上、3つの方法を総合的に考え、値段を決定しなくてはなりません。
強み・セールスポイントに書くべきこと
この部分には、あなたの商品が売れる根拠を記載します。
商品を売るためには、お客さまが商品のどの部分に価値を感じ購入してくれるのか、あなた自身で把握しておく必要があります。
まずは、お客さまがあなたの商品を買わなければならない理由は何か?他社には真似のできないあなた独自のメリットは何か?といったことを書き出してみましよう。
あなたがお客さまに提供できるメリットは、以下のようなものが考えられます。
創業計画書にすべて羅列できるわけではありませんが、しっかりコンセプトを固めておくことが大切です。
①商品自体の持つ価値
あなたの商品・サービスが世の中に登場することによって、お客さまが受ける直接的なメリットについて考えます。
メリットを見つけるには、お客さまが不安に思っていること、お客さまが不便に思っていることなど「不」のつく単語を思い浮かべる良いでしょう。
②付加価値
お客さまは商品そのものの価値より、付随する付加価値を求めて商品やサービスを購入することがあります。
例えば、スターバックスを利用するお客さまは、コーヒーを飲むためだけに店舗を訪れるわけではありません。
ノートパソコンを開いて、ゆっくり調べものをする場所がほしくて来ている人も多いのです。
③時間価値
お客さまにとって、時間は重要な価値基準になります。
インターネットの普及により、瞬時に世界とつながるようになったため、時間価値の重要性はますます高まっています。
忙しいお客さまにとっては、24時間対応やタイムリーな対応にこそ価値を感じてもらえることもあるでしょう。
その反面、こういう時代だからこそ時間の経つのを忘れて、ゆったりとすごす賛沢な時間にも価値が生まれます。
お客さまにとって最適な時間感覚やスピード感覚を検討して、お客さまが求める時間価値を提供していくことが大切なのです。
④安全価値
安全性も、お客さまが商品やサービスに求める価値基準のひとつです。
最近では、情報に対するセキュリティなどにも価値を見出すようになってきています。
また添加物や遺伝子組み換え食品による食の不安、放射能事故による健康被害に対する不安にも敏感になっています。
商品の安全性も、一つのアピールポイントとなるのです。
⑤ブランド価値
お客さまは、商品やサービスに対するイメージやステータス・シンボル、愛着といったことに価値を見出す場合もあります。
ブランドとは、この商品は絶対に自分たちを裏切らないという信頼感のことをいいます。
一朝一夕に構築できるものではありませんが、1度認知されたブランド価値は、あなたの会社の利益獲得に最大限の貢献をしてくれます
開業資金の使い道と計算方法
資金の使い道が大切な理由
資金の調達計画を記載するときは、資金の使い道を明らかにして、使途別に必要額を記載するようにします。
資金の使い道を明確にすることは、融資の手続きの中で非常に重要となります。
なぜなら、金融機関の担当者が稟議書に「借入金の使途」を記載しなければ融資の決裁がおりないからです。
貸し手からすれば、何に使われるのかわからない資金は、貸すことができないのです。
起業に必要な資金は、大きく分けて4つです。
4つの資金とは、「開業準備資金」「つなぎの資金」「赤字補てん資金」「生活資金」を指します。
このうち金融機関から融資の対象になるのは「開業準備資金」と「つなぎの資金」の2つだけです。
現実的には、起業して最初の月から利益を出すことは至難の業です。
だからといって、正直に赤字を補てんしてくださいとお願いしても、金融機関は融資してくれないので要注意です。
またあなた自身の生活費も、新規事業の中から捻出すべきものとなります。
事業融資とは、文字どおり事業に用いるために借り入れる融資のことを指します。
そのため、生活資金は創業融資の対象にはなりません。融資を申し込む際、借りたお金を何に使うかは非常に重要なポイントになるので、しっかり押さえておきましょう。
設備資金の上手な借り方とルール
金融機関から見た借入金の使途は、「開業準備資金」か「つなぎの資金」のみになります。
創業計画書に書くときは、この資金を「設備資金」と「運転資金」に分けます。
設備資金とは、文字どおり設備に投資するためのお金です。
店舗や事務所の保証金や、内装工事代、自動車やパソコン、机などの器具備品を購入するために必要な資金を指します。
設備資金を借りる場合には、業者からの見積書や発注書を必ず添付して、どこにいくら支払う予定か明らかにする必要があります。
また店舗や事務所などの不動産を賃貸する場合には、契約書や仮契約書の写しも求められます。
10万円以内の少額のパソコンや机・イスなどの什器でも、開業にあたってまとめて購入すると金額が大きくなります。
これらも設備資金として考えることができます。
最近ではインターネットや格安店で設備を購入するケースも増えています。
このような場合は見積書がもらえません。
このような場合は、代わりに商品のカタログなどを準備して、具体的に購入を予定している商品と、購入予定金額を明示すれば大丈夫です。
設備資金のほうが運転資金よりも借入が容易
設備資金は、使い途や必要金額がはっきりしているので、見積書や契約書さえ整えることができる場、運転資金よりも容易に借り入れることができます。
自己資金で設備資金を支払ってしまい運転資金を借りようとしたけれど、全額を調達できなかったというのはよくある失敗例です。
設備資金でも「許認可」が必要な事業の場合、前もって事務所などを借りなければならないケースもあります。
起業に必要な資金全体を計算し、計画的に自己資金を使うことが大切なのです。
設備資金を見積書どおりに使わないと資金使途違反になる
設備資金を借り入れた場合、資金を資金使途通りに使ったかどうか、金融機関から厳しくチェックされます。
資金の使途を確認するために、業者に支払った領収証や振込の控えを要求されたり、実際に購入した資産を見に来たりします。
店舗を改装するための設備資金として借り、実際は仕入代や人件費などとして使った場合すぐにバレてしまいます。
例えば、融資を申し込むときに500万円の見積書を提出したとします。
融資がおりた後、もっと安い業者に頼んだので、実際には400万円で済みました。
そこで、残った100万円をほかの運転資金の支払いに充てたという場合も、厳密には「資金使途違反」になります。
資金使途違反は、あとから決算書で発覚する場合もあります。
購入したはずの設備が決算書に載っていなければ、設備を購入する予定だったお金はどこに消えたのかということになるのです。
資金使途違反が発覚した場合、大きなペナルティを受けることになります。
次の融資を受けたいときに、公庫融資や保証協会づけで借りるのが非常に難しくなってしまうのです。
悪質と判断された場合、2度と融資を受けられなくなることもあります。
最悪の場合、借入の一括返済を求められることもあります。
また設備資金の場合、金融機関が直接見積書を提出した業者にお金を振り込むこともあります。
業者から高い見積書を集めて、少しでも多くの資金を借りたいと思うかもしれませんが、それほど甘いものではありません。
運転資金の上手な借り方とルール
次に、運転資金の借り方を見ていきます。まずは、運転資金の計算方法です。
運転資金は、設備資金のように物の値段一つで考えることが出来ません。
商品を売っても、すぐに現金が入ってくるわけではないので、その間のつなぎの資金を見積もる必要があります。
そこで、事業が軸道に乗るまでの経費を見積もります。
また、お米や調味料など、開業時にまとめ買いするものやホームページの制作費といった開業準備資金のうち、設備資金に該当しないものも運転資金として計算することができます。
具体的には、従業員へ支払う給料、店舗や事務所の家賃・駐車場代、電気・水道・ガスなどの水道光熱費、電話代やインターネットのサーバー使用料、郵送代などの通信費、折り込みチラシやホームページ作成料などの広告宣伝費、電車賃や出張宿泊日などの交通費、コピー機や車両などのリース料、トイレットペーパーやコピー用紙などの消耗品費、所属する団体へ支払う会費、火災保険や自動車保険などの保険料、そのほかもろもろの雑費など多岐に渡ります。
このとき法人の場合は、生活費を役員報酬として運転資金に含めて計算することができます。
しかし、個人事業の場合、生活費は利益の中から捻出しなければなりません。
なお運転資金は、設備資金のように厳密な使い道は要求されません。
運転資金は何に使ったではなく、返済できるかがポイント
これらの運転資金は、設備資金と違い領収書などの提出を求められることはありません。
創業計画書どおりに使わなくても、資金使途を厳しく問われることはないのです。
しかしその分、本当にその金額が必要なのか、返済は可能なのか、厳しく審査されます。
希望どおりの金額を借りられる保証はないのです。
起業してみると、予定どおりの売上があがらないこともしばしばあります。
予想もしなかった費用が発生することもあるでしょう。想定外のことが起こり、当初の見込み以上の運転資金が必要になりがちなのです。
そこで、創業当初の厳しい局面を乗り切るために、事業に使った以外に余裕資金があるか?行き詰まったときに親族などから借りることができるか?この2点を事前に押さえておきましょう。
自己資金で本気度を示す
ファイナンスという言葉の意味
起業とは、調達した資金を使って資産を購入し、売上をあげるための支払いをして、利益をあげる経済活動をスタートさせることです。
資産を購入したり、費用を使って活動したりすることを「投資」といいます。
投資活動のために必要なお金を集めることを「資金調達」といい、資金調達は「ファイナンス」ともいいます。
会社は利益の中から、税金を支払ったり、金融機関に返済をしたり、株主に配当したりします。
そして、さらなる利益をあげるための再投資をします。
投資には常にリスクが伴います。
投資した以上の利益をあげられないと投資は失敗に終わるのです。
会社が資金調達する方法は、株主から出資してもらう、借りる、補助金や助成金を使う、自分で稼ぐ、この4つの方法に集約されます。
このうち、株主からの出資、創業補助金や助成金、自分で稼ぐ、この3つの方法は、返済が不要です。
計画どおりに利益があがらなくても、返済というリスクはありません。
しかし、これから起業する人には、まだ自分で稼いだ資金はありません。
創業補助金は、募集期間が決まっているうえに競争倍率が高いので、応募しても審査に通らなければ活用できません。
しかも、補助金は一般的に先に支払いをすませたあと、条件を満たした費用に対応する金額だけがもらえる仕組みです。
そのため、支払いのための自己資金を用意するか、金融機関から融資を受ける必用があるのです。
小さな起業家に誰がお金を貸す?
小さな起業の場合、株主になってくれる人は第一にあなた自身ということになります。
あなた以外には、家族、友人、取引先、親会社があるなら親会社など、顔の見えるネットワークが限界でしょう。
上場企業と違って、不特定多数の人やプロの投資家から、出資金を集めることは現実的ではありません。
両親などからお金を出してもらう方法としては、株主になってもらう以外に借りるという方法もあります。
配偶者や両親などは、あなたを応援しようという気持ちから貸してくれるケースがほとんどでしょう。
返済や利息をあてにして融資をするというよりも、業績がよくなれば返してくれればいいという感じなのです。
また個人事業ではなく会社にした場合、会社はあなたとは別の法人格を持ちます。
どういうことかというと、あなたの個人名義の定期預金などを会社に貸すことも、融資のひとつの形態になるということです。
これらの資金は会社から見たら、期限が来たら必ず返さなければならない借入ではありません。
あるときに払えばいい、催促なしの借入ということになります。
さらに、創業補助金は返済が不要です。
申請しても必ずもらえるものではありませんが、可能性があるならチャレンジしない手はありません。
現実に考えた場合、起業時の自己資金は、あなた自身が用意できる資金、知人から資本金として融資してもらえる資金、両親などから借りた資金の3つといえるでしょう。
借りたお金は必ず返す
公庫や銀行から借りる場合は、返済というリスクが発生します。
思いどおりに利益があがらない時も、借りたお金は返済しなければなりません。
そして、金融機関に返済するお金は、利益の中から捻出するしかないのです。
会社を経営していると、この当たり前のことをつい忘れてしまいます。
赤字が続いて、利益の中から返済できない事態になったら、ほかから返済原資を見つけなければなりません。
そこで、個人名義の定期預金などの個人資産は開業資金として使わずとっておく、両親など身内の援助を最初からあてにせず、万が一の場合に備えて借金の可能性を残しておく、といったリスクヘッジが必要になるのです。
金融機関からは目いっぱい借りる
創業資金は、金融機関から借りられる限度額まで目いっぱい借入をすべきです。
これが、起業家のファイナンスで最も重要なポイントとなります。
融資を嫌がり、持っている自己資金を全部使い切ったり、両親に頭を下げて借りたりすると、いざというとき借りる先がなくなってしまうのです。
起業家マインドが大切
金融機関から多額の借金をするのが不安という人は、最悪の事態を想定してみてください。
利益があがらず事業を閉じることになったとしても、自分の手に負える範囲内の借金なら何も怖いことはありません。
勇気を持ってリスクを取った人だけが、リターンを得ることができるのです。
銀行や日本政策金融公庫などの金融機関は、際限なく融資をして破産に追い込むようなことはしません。
逆にあなたの身の丈にあった金額しか融資してくれないので、安心して借りることができるのです
起業家として成功するためには、いざとなったら自分で始末する覚悟を持たなければなりません。
その覚悟をもち、常にリスクを取り続けるマインドが必要です。
リスクを取り続けるからこそ、事業を拡大することができるのです。
制度融資の場自己資金までしか借りられない
起業に必要な資金を、全額融資でまかないたいと思っても、金融機関は無制限に資金を貸してくれるわけではありません。
特に創業融資の場合、判断すべき過去の実績がありません。
そこで金融機関は、創業計画書の「収支計画」から、この事業がどの程度の利益を生む事業なのか、利益の中から返済が可能かどうかを判断します。
しかし、計画はあくまで計画です。
どんなに緻密に計算した創業計画でも、実際のビジネスが計画どおり進むことはありえません。
では金融機関はどのような部分を見て、あなたの創業計画への支援を決定するのでしょうか?
金融機関は、最終的には事業にかけるあなたの本気度で融資の可否を判断します。
あなたの本気度は、あなたがどれだけ多くの自己資金を用意できたかと言い換えることができます。
自己資金は資本金だけでなく、あなたが会社に貸し付ける予定のお金や助成金、補助金など、返済不要のお金もすべてです。
実際のところ多くの制度融資で、自己資金の額を貸付限度額の基準として考えられています。
制度融資を利用する場合の自己資金は、事業にあてるために用意した資金から、長期借入金の2年分の返済予定額をマイナスした金額と決まっています。
これは個人で起業する場合、会社といっても実質的には個人と会社は一体とみなされてしまうからです。
売上目標実現の可能性をアピールする方法
創業計画の中でも重要となるのが売上の見込み
会社はキャッシュという血液がなければ、事業を継続していくことができません。
キャッシュを獲得する方法はいくつかありますが、起業したばかりでは事実上、金融機関から借りるか自ら儲けるしか方法がないでしょう。
金融機関から借りたお金は、自分で儲けたお金で返さなければなりません。
利益は借金を返し、新しい事業に投資をするために最も重要な原資となります。
そして、利益の源泉は売上の中にしか存在しません。ここが非常に肝心な部分になります。
黒字を出すのは実は簡単
利益は売上から経費を引いたものなので、売上以上に経費を使わなければいいのです。
事業をはじめて軌道に乗ってくると、このあたりまえのことをつい忘れてしまいがちです。
株式投資で儲けたり、補助金をもらったり、固定資産を売却して得たお金は利益ではありません。
この基本的なことをキモに銘じておきましょう。
販売先と支払条件を聞かれる理由
「販売先と回収条件」を記入する目的は、次の3つをアピールするためです。
①あなたの事業ドメイン
事業ドメインとは、あなたが考えている戦略のことです。
例えば、どこで誰に何を売ろうとしているのか、どうやって起業の成功というゴールにたどり着こうとしているのか、といったことになります。
②あなたの創業計画の実現性
創業の段階で、見込客が2~3件あれば、事業計画の実現可能性を強力にアピールすることができます。
反対に、ここに記載できる見込客が1いないということになれば、融資のハードルはグッと高くなってしまいます
③必要な運転資金
売掛金の回収条件は、最初の運転資金がどの程度必要か示すために書きます。
売掛金とは、商品の販売時の代金を後で回収する場合の、あとでお金をもらう権利のことです。
売掛金の回収日が遅ければ遅いほど、また売掛金での回収割合が多ければ多いほど、資金繰りが苦しくなり、たくさんの運転資金が必要になるというわけです。
収支計画欄「売上高」の予測の計算方法
創業計画書では、初年度と2年目以降の売上高を予測します。
しかし、ほとんどの場合、起業した初年度から期待どおりの売上があがることはありません。
特に飲食店のように消費者を相手にビジネス展開する場合は、BtoBのビジネスモデルと違い、お客さまに認知をしてもらうまでに時間がかかります。
2年目以降の売上は、事業が軌道に乗ったあとの売上という意味を持ちます。
軌道に乗ったあとの売上を初年度と分けて記入することで、金融機関はもちろん、あなた自身も最大どこまで売上を伸ばすことが可能なのか、あなたのビジネスの持つ規模感をつかむことができるのです。
売上計画ほど予測が難しいものはない
創業計画書を作成するうえで、売上計画ほど予測が難しいものはありません。
どの資産を購入するか、商品をどれだけ仕入れるか、広告費にいくらかけるかなど、支払いの予定は決めることができますが、売上は違います。
あなたの会社の商品を買うか買わないかを決める決定権は、お客さまが握っているのです。
そのうえ、創業時には参考にすべき過去の実績もありません。
売上の予測が困難なのは当然です。だからといって、希望的観測の数字を適当に記入してはいけません。
金融機関は、あなたの経営に対する姿勢を見ています。
相手はプロですから、実現できそうもない売上予測はすぐにわかります。
さらに言うと、甘い見込みの売上を予測して、実際に予測どおりの数字があがらず一番困るのはあなた自身なのです。
自分のためにも、売上計画はきちんと立てなくてはなりません。
売上の計算のしかた
それでは、売上計画はどのように立てればいいのでしょうか?
売上は、商品やサービスの単価に、販売数を掛けて計算するのが基本です。
売上の予測は、商品ごとに行うのが原則です。
しかし飲食店のように、取扱商品が多い場合には、商品をグループ分けし、グループごとの平均単価を計算する方法や、上位3位の商品群の計算をしてほかのグループにも当てはめる方法、会社全体の客単価を予測して計算する方法など、会社の業態にあった方法を選んでください。
販売数の予測の立て方
商品の値段は決まっているとします。
すると次は、販売数の予測を立てていくことになります。
販売数の予測といっても、先のことは誰にもわかりません。で
は不確定な売上の予測をどうやって立てるのでしょうか?
それには、まずあなたの会社とお客さまの関係性を、大きく3つに分類して考えます。
①狩猟型の場合
お客さまが、事業者ならこのパターンになります。いわゆるBtoBの場合です。
建設業や製造業の下請け、自社商品を製造して代理店や販売店に買い取ってもらうケースなどがこれにあたります。
この場合は、創業計画の段階から買ってくれそうな相手先にヒアリングしておきましょう。
サンプル品やカタログなどを持参して、商品・サービスを買ってくれるか質問してみて下さい。
そのうえで、どの程度の売上が見込めるか予測を立てます。
仮注文書をもらったり、仮契約を結んだりする相手が3社程度あれば、融資を楽に進めることができます。
書面を交わすまではいかなくても、注文の可能性が高そうな取引先を3社リストアップし、見込み客リストを作成し創業計画書に書き込みましょう。
もし、この段階で1社も見込み客リストの作成ができないなら、ターゲットを間違えているか、商品やサービスに問題がある可能性が高いです。
たとえ融資に成功したとしても、見込み客がゼロのまま事業をスタートさせるのはとても危険です。
再度、創業計画を見直すようにしましょう。
②漁業型の場合
お客さまが、不特定多数の一般消費者ならこのパターンになります。
小売店や飲食店、ホームページで集客したり、通信販売やインターネット販売をしたりする場合もこのグループです。
漁業型の場合には、狩猟型のように消費者1人ひとりの見込み客リストをつくることができません。
そこで、店舗の前を通る通行客の数や、店舗の面積などをもとに販売数を予測していきます。
商圏内人口から販売数を予測する場合、人口を把握することが重要となります。
商圏内人口を予測する方法としては、実際に現地に出向いて人の流れを見たり、出店を予定している商業施設の関係者に問いあわせたりするのが一番です。
また各自治体には、人口動態などを調査した「行政要覧」というものがあります。
人口数の推移や男女別・年代別の人口構成比、さらに地域別や町別に細かくエリア分けした年代別人口なども閲覧できます。
各地方自治体が、独自に消費購買動向調査などを行っている場合もあるので、インターネットで調べてみてください。
どうしても自分で調査ができない、またはより正確な情報が欲しいといった場合、調査会社を利用する方法もあります。
インターネットで「商圏内人口統計」と検索すると、リサーチ会社が何社も出てくるので参考にしてください。
ただし、費用はかかるのでよく検討して利用して下さい。
店舗の面積を参考にする場合、席数が重要です。
客席稼働率は店にもよりますが、60%から80%で計算するのが一般的です。
なぜ客席稼働率を掛けるかというと、たとえば4人席のテーブル席があったとしても、すべてのテーブルに4人組みのお客さまが座る訳ではないからです。
満席になったとしても、空いている席が2割から4割はあるだろうと考えます。
1日あたりの目標回転数は、1時間あたりの予測回転率にお店のオープン時間を掛けて計算します。
1時間あたりの予測回転率(1時間÷お客さまの平均的な予測滞在時間)は、お客さまの平均的な滞在時間を予測して計算します。
収支計画は、最悪の場合でもその事業を継続できるよう固めに予測することが肝心です。
そこで売上予測をするときは、ストレスチェックとしてさらに2割から6割少ない数値で見積もるようにします。
ちなみに収支計画書を作成する場合、日本政策金融公庫は月単位で、信用保証協会の場合は年単位で計算します。
混乱しないよう注意が必要です。
③農業型の場合
例えば、セミナー受講者の中からカウンセリングのお客さまを獲得する、メルマガなどで会員を募り、その中からコンサルティングのお客さまを獲得するといったパターンになります。
この場合、短期的な売上アップは難しいかもしれませんが、いったん顧客になると固定客になる確率が高くなります。
そのため、中長期的に見ると安定的な売上が見込まれます。
マーケットが成熟してくると、競合他社との競争が激しくなります。
そのような場合でも、自分でお客さまを育てる農業型という発想があれば、安定的な売上を望むことができるでしょう。
書式について
信用保証協会と日本政策金融公庫の創業計画書の書式は、若干異なっているので微調整が必要です。
信用保証協会の用紙は年間売上高を記入するフォーマットになっています。
一方、日本政策金融公庫の場合は、ひと月あたりの平均売上高を書くようになっています。
両方に融資を申し込む場合、信用保証協会の数字を12で割って日本政策金融公庫の計画書を作る、もしくはひと月あたりの売上高を計算して日本政策金融公庫の書類を作成し、これに12を掛けて信用保証協会の数字を計算したもので大丈夫です。
また信用保証協会は千円単位、日本政策金融公庫は万単位の記入となっています。
間違えないように気をつけましょう。
継続可能な事業であることをアピールする方法
仕入先や外注先への支払い条件を聞かれる理由
ここまで事業計画書の作成では、事業にかける想いからスタートし、顧客が何を求めているか、自分には何ができるか、具体的にお客さまに提供できる商品は何か、どうやって売上につなげていくか、これらを戦略的に考えてきました。
しかしその戦略は、1度きりの成功では意味がありません。会社は存続していくことが重要なのです。
創業計画書で仕入先と外注先を具体的に記載する理由は、お客さまに対して継続的に売れる仕組みができているかどうかを示すためです。
あなたがどんなに社会から求められる商品を取り扱っていても、継続的に商品を提供できないと意味がありません。
継続的に商品を提供するためには、安定的に材料を確保したり、販売ルートを確立したりする必要があるのです。
起業とは、お客さまに対して「このような商品を提供し続けます」と宣言することでもあります。
またブランドとは、「あなたとお客さまの間で交わされる約束ごと」と言い換えることができます。
約束を守れなかった場合、提供する商品が優れていればいるほど、ネガティブな評判も大きくなってしまいます。
1度失った信用を回復するのは、新しく信用を勝ち取るより何倍も難しいものです。
そのような状況を避けるためにも、仕入先や外注先はしっかりとしたところを選ぶ必要があります。
仕入先・外注先に書くべきこと
「仕入先・外注先」欄には、商品や材料を誰から仕入れるのか、誰に制作を依頼するのかなどを記載します。
仕入先や外注先への支払条件まで書くことで、仕入ルートが確保できていることを示すことができます。
同時に金融機関に対して、どの程度の運転資金が必要かを示す目安にもなります。
収支計算書について知っておくべきこと
収支計算書とは、1年の間にいくら儲かったか、または損したかを集計したものです。
収支計画書の作成を難しく考えることはありません。簿記や会計の知識も必要ありません。
支払いがどの経費項目に当てはまるかは、常識の範囲内で考えれば十分です。
該当する支払いがなければ「0」と記入すれば大丈夫です。
収支計算書には、会社の資産になるものや負債になるものは含めないので注意して下さい。
また収支計算書は、2つの費用と2つの利益に分けて表示します。
2つの費用とは、「売上原価」と「その他の費用(販売費および一般管理費)」のことです。
2つの利益とは、「売上総利益」と「営業利益」のことを指します。
売上と費用は紐つきで考える
収支計算書を作成するときは、売上と費用を必ず紐つきでとらえます。
例えば商品を購入したけれど、まだお客さまには売れずに手元にある場合は、費用として認識することはしません。
また設備などを購入したときは「減価償却」という方法を使って、売上と費用を正しく対応させます。
減価償却とは、設備などの高額な資産は購入した年に1度に費用として処理しないで、その資産が売上に貢献する期間の間、少しずつ按分して費用に計上するという考え方です。
収支計算書のルール
収支計算書を作成するうえで知ってくべきルールは、たった1つだけです。
そのルールとは、収支計算書には会社の資産になるものや負債になるもの、資本金などは含めないということです。
収支計算書は、売上から費用を差し引いた利益を計算するものなのです。
売上原価を計算する
次に費用を「売上原価」と「その他の経費(販売管理費)」とに分けて計算します。
売上原価が最終的な利益に与えるインパクトが最も大きいため、その他の経費(売管理費)と分けて計算します。
売上原価とは、売上をあげるために直接かかった費用を指します。
売上は商品やサービスの単価に、販売数を掛けて計算します。
そこで、予測売上原価も同様に、商品やサービスの売上原価に販売予測数を掛けて計算します。
また売上原価は、売上をあげるために直接かかるコストなので仕入だけとは限りません。
商品を据えつけるための費用や、商品の包装代なども売上原価になります。
また工場で働く従業員の人件費も売上原価ですし、外注費も売上原価になります。
どの費用を売上原価ととらえるかは、会社が独自の判断で決めて大丈夫です。
その他の経費(販売管理費)を計算する
その他の経費については、商品を売るために必要な販売費や会社を維持・管理するために必要な管理費などがこれにあたります。
創業計画書に主だった費用が示されているので、その項目をそのまま使用してください。
起業すると、思いもよらなかった費用が突然発生して慌てることがあります。
費用を予測することは、リスクを想定にすることと同じなのです。
想定外の資金ショートを起こさないために、思いつく限りのリスクを洗い出しておくことが重要になります。
売上総利益と営業利益
売上総利益とは、売上から売上原価を引いたもので「粗利」とも呼ばれます。
粗利が大きいということは、それだけ付加価値の高い商品を社会に提供しているということです。
つまり、社会に貢献する事業であるということもできます
営業利益とは、売上総利益から販売管理費を引いたものです。
同じ付加価値の商品を販売していたとしても、広告費や管理費にたくさんお金を使うと営業利益は小さくなります。
営業利益を見れば、その事業がいくら儲かるか分かるというわけです。
売上原価(収支計画。事業の見通し欄)の計算方法
実際に収支計画(事業の見通し)欄に記載するときには、商品・サービスの売上原価はどのようにして計算すればいいのでしょうか。
売上原価を計算する場合には、以下の3つに分けて考えます。
①自分で商品をつくる場合
製造業や建設業がここに分類されます。
この場合、同じ種類の製品を、見込みで繰り返したくさん生産する場合と、種類や形状、規格、品質などの異なる製品を、客の注文に応じて個別に生産する場合に分けられます。
同じ種類・タイプの商品をたくさん製造する場合には、その商品を一定数作るためにかかる原価を合計し、これを製造数で割って、商品1個あたりの原価を計算します。
まず商品の製造にかかる材料費、製造にたずさわっている労務費、および製造にかかるその他の経費を合計します。
この経費を製造数で割ることで、商品1個あたりの売上原価を計算することができます。
こうして計算した1個あたりの売上原価に販売予測数を掛けることで、予測売上原価を計算することができます。
種類や形状、規格などの異なる商品を、お客さまの注文に応じて個別に生産する場合は、注文ごとに売上原価を個別に予測することができます。
注文1件ごとにそれぞれにかかる材料費、たずさわっている労務費、そのほかの経費を予測し、これらのコストを積み上げて1件ごとの原価を計算します。
そして、注文が見込まれる売上として、収支計画に記入した売上に対応する分の売上原価を合計し、創業計画書の売上原価欄に記入します。
このような受注生産の場合は、売上1件あたりの金額も大きいケースが多いかと思います。
できるだけ正確に売上原価を予測するために、個別に原価計算することをお勧めします。
②他から仕入れた商品を販売する場合
小売業などのように、他から仕入れた商品を販売する場合は、商品ごとに1点あたりの予定仕入価格を推計します。
しかし、コンビニエンスストアや薬局などのように、取扱商品の種類が多い場合には、まず商品を高い売上高が見込める順に、A、B,Cの3種類にグループ分けします。
そして、A区分の主力商品の原価率を計算して、会社全体の平均的な「標準原価率」とします。
売上原価は、売上高に標準原価率を掛けることで予測できます。
標準原価率は、まず主力商品の予想原価を計算し、これを販売予定価格で割って求めます。
本来ならば、すべての主力商品で標準原価率を計算した法が良いですが、スタートアップ時点では、ベンチマークとなる商品群を3種類ほど選んで原価率を計算すれば十分でしょう。
ただし2年目以降に事業計画を立てるときは、その都度実際原価と比較して、より正確な標準原価に修正する心がけが大切です。
③サービス業の場合
美容院、人材派遣業、経営コンサルタントなど、仕入の発生しないサービス業の場合には、売上原価をどのように計算すればいいのでしょうか?
厳密にいえばサービス業にも売上原価という概念は存在します。
しかし、起業家が創業計画書を作成する際は、仕入は0円とし、収支計算書の欄に記載すれば十分です。
飲食店の場合には、食材の原価率を把握することが利益確保のために重要な要因となります。
そのため、食材だけを売上原価として把握し、ほかの費用は販売費として処理するとよいでしょう。
収支予測で儲かる事業であることをアピールする方法
金融機関に収支予測を提出する目的
金融機関は、あなたの事業の採算性を見るために収支予測を求めます。
借りたお金は、利益の中から返済しなくてはなりません。
貸したお金をきちんと返済できるかどうかアピールすることが、収支予測を作成する目的です。
収支予測は1年目と2年目以降で分けて考える
日本政策金融公庫と信用保証協会のどちらを利用しても、創業1年目と2年目以降に分けて、それぞれの数字を記入する形式になっています。
なぜなら、創業初年度は事業を軌道に乗せるためのコストがたくさん発生する上に、定どおりの売上をあげることが難しいからです。
初年度の赤字のことを「創業赤字」といいます。
金融機関は、創業赤字については目をつぶってくれます。
その代わり、2年目以降はきちんと利益の出せる会社であることを、具体的な数字で見せなければなりません。
これが、1年目と2年目以降に分けて、収支計画を記入する理由です。
ビジネスはいくら稼いだかで評価される
どんなに素晴らしいコンセプトを掲げても、優れた商品を開発しても、お客さまに受け入れてもらえなければ意味がありません。
また初年度から高い売上を達成しても、売りあげた金額以上のコストがかかってしまったら赤字会社になってしまいます。ビジネスは非情なのです。
新規事業の成功は、事業が世の中に受け入れられ、新しい価値を創造することができるかどうかにかかっています。
価値の創造は、ビジネスの世界では貨幣という単位で測定されます。
ビジネスは、いかに多くの貨幣を稼げるかで評価されるキビシイ世界といえるのです。
これは、たくさん稼ぐ会社は、社会にとって価値のある会社と言い換えることもできます。
稼ぐ会社は、それだけ顧客を満足させ、従業員を雇い、家賃を支払い、交際費やその他諸経費を払い、税金を払って社会に貢献しているのです。
人件費について
会社をつくって起業する場合は、人件費に自分の役員報酬を含めて計算します。
賞与を支払うことが決まっている場合は、支給予定額を12で割って、ひと月あたりの金額を計算し、人件費にプラスしておきましょう。
一方、個人事業の場合、自分で自分に給料を支払うことはできないので、生活費は利益の中に含まれることになります。
ほかに、人件費として考えておかなければならない経費には、健康保険料や厚生年金の会社負担分、労働保険の会社負担分および労災保険料などの法定福利費と、通勤交通費や募集費、研修費、損害保険や社宅家賃など法律で決められてはいないけれど、慣習として会社が負担する福利厚生費が挙げられます。
法定福利費の会社負担分は、毎年のように保険料率の改定があるので、最新の数字を調べて計算するようにしましょう。
家賃について
店舗や事務所の家賃はもちろん、駐車場代やレンタル倉庫の賃料なども含まれます。
自宅を事務所として会社に貸す場合、会社があなたに支払う家賃も立派な経費です。
また、個人事業の場合で、自宅兼事務所を賃貸で借りている場合は、事業用部分を按分して経費として計上しましょう。
支払利息について
支払利息を計算するために、まずは金融機関から借りる予定の金額、返済する予定の期間、借りる予定の利率を仮定することからはじめます。
希望どおりの融資を実際に受けられるかどうかは分かりませんが、借りたいと考えている希望の融資金額をもとに利息を計算します。
返済期間も、自分で希望する期間を予測します。
リスクを最小限に抑えたいなら、返済期間が長いほど資金繰りが楽になります。
公庫融資や制度融資で認められている期間を、目いっぱい利用することがポイントとなります。
ただし、次の事業展開を考えている場合は、借金はなるべく早く返したほうが有利になります。
このとき、元本の据置期間を利用するかどうかも考えなくてはなりません。
据置期間を目いっぱい利用すると、その後の元本返済額が大きくなってしまいます。
様々なことを加味した上で、無理のない返済計画を立てることが肝心です。
金利については、制度融資の種類、保証人の有無、担保の有無によっても異なります。
最新の利率は、日本政策金融公庫のサイトや、各都道府県の信用保証協会のサイトでチェックできるので、確認してみて下さい。
その他の経費について
売上計画を立てるときは、自分に厳しく、少なく見積もることが原則になります。
逆に経費予測を立てるときは、自分に甘く、できるだけ多めに予測することが重要です。
事業をスタートすると、予想外の事態が起こり、不測の費用は発生するものと思っておきましょう。
想定される不測の事態を全て洗い出し、費用を準備しておく必要があります。
経費のモレを防ぐためには、投資としての販売費、コストとしての販売費、会社を維持するための管理費の3つに分けて、予測を立てると良いでしょう。
開業準備資金の仕組みと減価償却費
新規事業をはじめるための開業準備資金
特にスタートアップ時は、限られた予算の中で事業をスタートしなければなりません。
そのため、計画的かつ効果的に資金を投下していかないと、あっという間にキャッシュが底をついてしまいます。
企業時には資金を、開業準備資金とつなぎの資金、赤字補てん資金と生活資金の4つに分けて用意することが、お金に困らない起業の秘訣です。
店舗や事務所を構えたり、商品を一度にそろえたり、開業時にだけかかる資金を開業準備資金といいます。
収支計算書を作成するためには、開業準備資金を「費用になるもの」と「資産になるもの」に分類しなければなりません。
まずは、開業時にはどのような費用がかかるのか見ていきましょう。
店舗などを構える資金
例えば飲食店をオープンする場合、店舗を借り、内装をリノベーションし、厨房設備や冷暖房設備を設置し、看板をかけ、業務用の冷蔵庫などを購入しなければなりません。
また店舗を賃貸するための保証金を支払ったり、机やイス、食器をそろえたりと、多額の開業資金が必要になります。
これらは「固定資産」として認識され、購入した年に1度に費用として計上されるものではありません。
商品や貯蔵品をまとめ買いする資金
コンビニや薬局など小売店を開業するときは、オープンまでにすべての商品を一気に揃える必要があります。
これらはいったん「商品」や「材料」として認識され、使った分だけが費用として計上されます。
また、通常の飲食店の場合でも、食材や調味料、洗剤などを揃えるためにまとまった資金が必要になります。
さらに、パンフレットや名刺・封筒などの貯蔵品など、一つ一つの金額は小さいけれどまとまった額の資金が必要になるものもあります。
これらは「貯蔵品」として認識され、使った分だけが費用として計上されます。
開業準備資金は「費用」と「資産」に分ける
「商品」や「材料」「貯蔵品」は、購入と同時にすぐ使い切ってしまうものではありません。
通常は少しずつ消費して、なくなりそうになったら使った分だけ買い足していきます。
お店をオープンして2年目以降になれば、改めて資産として認識することなく、運転資金の一部と考えます。
しかし、開業時はそうはいきません。お店の棚をいっぱいにするために、ひと通りの商品を仕入れる必要があります。
そのためには、まとまった購入資金が必要になります。
そこで開業時にだけ発生する、商品のまとめ買い資金を開業準備資金として把握しておかなければなりません。
これを怠ると、思いがけず資金ショートを起こす原因になってしまいます。
このように開業準備資金は、固定資産を購入するための「設備資金」と、開業時だけに発生する「まとめ買い資金」に分けて考える必要があります。
「まとめ買い資金」は、創業計画書では「運転資金」の欄に記入します。
まとめ買い資金
開業時にまとめ買いした商品や材料は、基本的には1年以内に使い切ってしまうものになります。
そこで、開業時の投資計画では運転資金とし、毎月または毎年使うであろう金額を見積もって、これを収支計画書の費用として計上します。
飲食店にかぎらず、雑貨屋やコンビニエンスストア、薬局など、開業時に、商品や消耗品の購入に多額の資金が必要な業種はたくさんあります。
設備資金とは何か?
固定資産を購入するための設備資金を、その性質に応じて、「時が経っても価値が減少しない資産」と「時の経過にともなって、価値が減少する資産」の2つのタイプに分けます。
時が経っても価値が減少しない資産は、収支計画の計算に関係ありません。
しかし、時の経過とともに価値が減少する資産は、減価償却という特別な方法で費用を計算し、収支計画に織り込まなければなりません。
時が経っても価値が減少しない資産について
時が経っても価値が減少しない資産は、会社が所有している間費用として認識することはなく、売却した場合などにかぎり、売却金額と取得した金額との差額を費用または収入として収支を計算します。
そのため、時が経っても価値が減少しない資産については、収支計画には計上しません。
時の経過にともなって価値が減少する資産について
時の経過に伴い価値が減少する資産は、収支計画でも費用として認識しなければなりません。
制度融資の場合は、はじめから用意されている「減価償却費」という項目を使います。
日本政策金融公庫の場合は「その他」に含めて計算し、備考欄にその旨を記載すれば十分です。
減価償却費とは?
それではここで、減価償却費について説明しておきます。
まず資産とは、使用期間中1年を超えて売上に貢献するものを指します。
資産が売上に貢献する期間を何年で見積もるかは、会社や業態によってまちまちです。
しかしほとんどの会社は、国税局が公表している「減価償却資産の耐用年数表」を参考にして、償却年数を決めています。
例えば、飲食店で80万円の冷蔵庫を購入するとします。
この場合の冷蔵庫は一般家庭用ではなく、飲食店で使う業務用のものなので、「減価償却資産の耐用年数表」によると使用期間は8年になります。
このとき、1年目に80万円を支払ったからといって、その年度に80万円全部を費用に計上すると、2年目から8年目までは費用ゼロで、売上だけが計上されてしまいます。
これではいくら儲かったのか、正確な儲けを計算することができません。
そこで、固定資産を購入した年度に一括して費用として認識するのではなく、その固定資産が売上に貢献できる複数年にわたって期間按分し、「減価償却費」という費用を計上していきます。
80万円の設備を8年間使用するとしたら、80万円÷8年=10万円です。
つまりこの冷蔵庫については、毎年10万円ずつを費用に計上していくことになります。これが減価償却という考え方です。
減価償却費は、1年目に実際に現金が支払われ、2年目以降現金の支出がなくて費用だけが計上されるという特殊な性格を持っています。
金融機関がチェックするポイント
減価償却費が返済計画の大きなフックになる
創業計画書は、その事業がきちんと利益を確保できるのか自分で確かめるためと、融資を申し込んだ金融機関に対して、きちんと返済できることを示すために作成します。
金融機関にとって最大の関心事は、貸したお金が返ってくるかどうかの一点です。
その返済は、事業で儲けた利益から行われます。
年間の返済金額と利益を比較して、利益のほうが大きければその事業に融資をしても大丈夫というわけです。
ただしこのとき、単純に返済金額と利益を比べるわけではありません。
なぜなら、販売管理費の中には、お金は出ていかないけれど費用として計上される「減価償却費」があるからです。
お金は出ていかないけれど費用計上されるということは、その分だけ資金を社内にプールできるということを意味しています。
キャッシュ・フローとは?
金融機関は、税引き後の利益に減価償却費を足した金額を、会社が自由に使えるお金と考えます。
これがキャッシュ・フローになります。
キャッシュ・フローが、毎年の返済金額を上回っていれば、貸したお金が返済される可能性が高いと判断されるのです。
1年目の赤字は大丈夫
新規事業の立ち上げには、初期投資が大量に必要になります。
また、初年度からいきなり利益を出すのは簡単なことではありません。
2年目から黒字に転換し、3年目から4年目に累積の赤字が解消できれば十分と言えます。
金融機関も創業時の一時的な赤字は、恒常的な赤字とは区別して判断してくれます。
銀行融資を各自なものにするために
このように事業計画書は何年も先のことまで考え、作成しなくてはなりません。
しっかり利益が出るよう、様々な数字を計画的する必要もあるでしょう。分からないことも多いかもしれません。
ですがここで紹介したポイントを押さえておけば、融資をおろすことができる事業計画書を作ることができるでしょう。
ぜひ参考にして下さいね。