助成金(奨励金)は、資金の不足しがちな創業当初の経営者にとって大きな味方となります。
融資とは異なり返済義務もありませんので、活用しない手は無いといえます。
助成金(奨励金)には大きく分けて、厚生労働省が設定するもの、経済産業省が設定するもの、各地方自治体(都道府県及び市区町村)が設定するもの、の3種類があります。
このページでは、厚生労働省が設定するものを中心に解説していきます。
若者を雇ってもらえる助成金 トライアル雇用助成金
トライアル雇用奨励金とは
トライアル雇用奨励金とは、職業経験、技能、知識等が不足していることで、安定的な就職が困難な求職者をハローワーク等の紹介により、一定期間試行雇用した場合に受給できる助成金です。
雇用した求職者の適性や業務遂行可能性を見極め、求職者と企業の相互理解を促進すること等を通じて、早期就職の実現や雇用機会の創出を図ることを目的としています。
簡単にいえば、正社員としての経験があまりないフリーターや、そもそも勤務実績がほとんどないニート、リストラされてしまった中高齢者等、企業側から見ればいきなり正社員としては採用しにくい人材が対象となります。
このような対象者を、給与の一部(3か月で最大四万円)を後で国が負担するから、試しに3か月雇ってください。
その3か月間で教育できれば正社員として雇用してください。ただ、教育をいくらしても役に立たないようであれば無理に全員を正社員にしなくてもかまいません。
このような奨励金となっています。
この奨励金は比較的認知度が高いので、あなたもすでにご存知かもしれません。
ハローワークに求人を出したことがある方であれば、窓口からこの奨励金の紹介を受けたことがあるかもしれません。
トライアル助成金は、他の助成金と比べ手続も比較的簡単です。非常に使い勝手のいい奨励金であるため、利用している企業の数もたくさんあります。
あなたにとっても非常に有益な奨励金かと思いますので、ぜひ活用して頂きたいと思います。
そこで、この奨励金の詳細な内容や利用手順等を説明いたします。
トライアル雇用奨励金の要件
トライアル雇用奨励金を受給するためには、対象労働者が以下の4つの条件のいずれかに該当する者でなくてはなりません。
①これまでに就労の経験のない職種または業務に就くことを希望する者
②離転職を繰り返している者(過去2年以内に2回以上離職・転職を繰り返している状態にある人で、今後は長期的に安定した就業を希望する人)
③直近で1年を超えて離職している者(パート、アルバイトなど正社員以外の就業形態で働いていた場合は「離職」していたことには当たらなくなります)
④就職支援に当たって特別の配慮が必要な、以下8つの条件のいずれかに該当する者
・母子家庭の母等
・父子家庭の父
・生活保護受給者
・季節労働者
・中国残留邦人等永住帰国者
・日雇労働者
・住居喪失不安定就労者
・ホームレス
・その他トライアル雇用の活用が必要と認められる者
さらに職業経験、技能、知識等から安定した職業に就くことが困難な求職者として、トライアル雇用が必要であるとハローワークが認める者であることが必要となります。
次に、対象労働者をハローワークの紹介により、トライアル雇用で雇い入れる必要があります。
つまり、本奨励金を利用したい企業は、ハローワークに求人の申し込みをしなくてはならないのです。
その求人票を見た求職者を、企業が採用した場合でないと本奨励金は利用できません。
自社のホームページ上の求人案内や求人広告を通じて雇い入れた従業員が、対象労働者の条件を満たしていたとしてもこの奨励金は受給できないので注意してください。
また、雇用契約の内容として、原則3か月のトライアル雇用を締結しなくてはなりません。
さらに、1週間の所定労働時間を原則30時間以上にする必要があります。
例えばお試しとして「最初の3か月間は1日8時間の週3日勤務」という契約内容の場合には、本奨励金は利用できないのです。
トライアル雇用奨励金の支給額
本奨励金の支給額は月額4万円となります。
つまり、3か月間で最大12万円となります。
ちなみにトライアル雇用奨励金は、トライアル雇用期間の途中で対象労働者が自己都合で退職しても多少支給されます。
例えば、対象労働者が2か月で自己都合により退職した場合には、2か月分(8万円)が支給されます。
さらに対象労働者が入社1日目で退職してしまった場合でも、1万円は支給されます。
トライアル雇用奨励金の利用手順
どの助成金(奨励金)も利用手順を間違えると、その他の要件を満たしたとしても1円も支給されません。
そのため、利用手順は事前にしっかりと把握しておく必要があります。
①ハローワークに「トライアル雇用求人」を出す
トライアル雇用奨励金を利用する場合、まずはハローワークに出向き「トライアル雇用求人または、トライアル併用求人」の形式で求人を申し込む必要があります。
必ずハローワークの担当者さんに「トライアル雇用求人でお願いします」と伝えなければなりません。
ここが最も重要な点ですので、忘れないようにしておいて下さい。
何も伝えないと一般求人となってしまいます。
この場合、要件を満たす求職者を採用したとしても、トライアル雇用奨励金の対象にならなくなってしまいます。
トライアル雇用奨励金を利用したいのであれば、必ず「トライアル雇用求人」と伝えて下さい。
②「トライアル雇用求人」に申し込んできた求職者を面接の上採用する
「トライアル雇用求人」を見て入社を希望する求職者がいると、ハローワークより採用担当者宛に連絡があります。
そこで、面接日時を決定します。その後は面接を実施し、採用不採用を決定します。
ここで、一般求人とトライアル雇用求人を併用している企業の場合、注意が必要です。
一般求人に対する求職者とトライアル雇用求人に対する求職者の、二通りの求職者から連絡が来るからです。
一般求人に対する求職者を採用しても、トライアル雇用奨励金の対象とはなりません。
一般求人と併用している場合は、ハローワークからの連絡が入った際「トライアル雇用奨励金の対象者ですか」と必ず確認して下さい。
③採用が決まったら、求職者が提出した紹介状に付いている「採否通知書」をハローワークにFAXまたは郵送する
ハローワークもしくは労働局から郵送されてくる「トライアル雇用実施計画書」を作成し、対象労働者の入社日から2週間以内にハローワークにFAXする。
「トライアル雇用実施計画書」は2週間以内に必ずFAXして下さい。
この期日を忘れ、トライアル雇用奨励金を利用できなくなるケースが多くあります。
助成金(奨励金)は期日にさえ間に合えば、不足書類や内容に問題があっても、ハローワーク担当者がある程度融通をきかせてくれます。
しかし期日を1日でも過ぎてしまった場合は、問答無用で助成金(奨励金)が利用出来なくなるのです。なので、期日は絶対に守るようにしてください。
また「トライアル雇用実施計画書」は、「採用通知書」が届いてから企業宛に発送します。
そのため、採用が決まり次第、至急「採用通知書」を提出しないと「トライアル雇用実施計画書」がなかなか送られてこないという事態になりかねません。
「採用通知書」も、採用決定したらすぐに提出するようにして下さい。
なお、「トライアル雇用実施計画書」は厚生労働省のホームページからダウンロードすることも可能です。
もしも「トライアル雇用実施計画書」が届かない場合は、こちらを利用して下さい
④対象労働者と雇用契約を締結し雇用契約書を作成する
雇用契約書については「雇用契約期間:平成○年○月○日〜平成○年○月○日(3か月間)」という形式で作成して下さい。
⑤対象労働者を入社日から雇用保険に加入させる
対象労働者を、入社日から雇用保険に加入させて下さい。
雇用保険加入手続は入社日の翌月10日までに行えば法的に問題ありませんが、加入日(被保険者資格取得日)は必ず入社日として手続を行わなくてはなりません。
例えば、1月1日が入社日の場合、実際の勤務初日が1月4日であっても、雇用保険加入日は1月1日にしなければなりません。
⑥3か月間の訓練を実施する
訓練(いわゆるOJT)は提出した「トライアル雇用実施計画書」に従い行わなくてはなりません。
⑦訓練終了後正社員とする
「トライアル雇用実施計画書」に記載した常用雇用に移行するための要件を満たす場合、正社員として雇用契約を締結し雇用契約書を作成して下さい。
この要件を満たさない場合には、正社員に移行せずトライアル雇用のみで終了とすることもできます。
ただし、正社員にしない人数が一定の数を超えると、トライアル雇用奨励金の利用に影響が出てくる場合があるので注意が必要です。
⑧訓練終了後2か月以内に管轄ハローワークに支給申請書を提出する
訓練終了日の翌日から2か月以内に、賃金台帳や出勤簿、雇用契約書(労働条件通知書)の写し等、必要書類を添付した支給申請書をハローワークに提出しなくてはなりません。
訓練途中で対象労働者が自己都合により離職した場合には、離職日の翌日から2ヶ月以内の提出となります。
この期日も必ず守らなければ助成金を受給できません。
⑨支給申請書提出後、4か月〜8か月後に指定口座に奨励金が支給される
トライアル雇用奨励金利用の注意点
・会社都合による離職(解雇、退職勧奨等)を行わない
対象労働者は当然ですが、それ以外の労働者に対して会社都合による離職を行ってはなりません。会社都合による利殖を行うと、トライアル雇用奨励金だけでなく、その他の助成金も利用できなくなります。助成金を利用する場合、解雇や退職勧奨を行ってはいけません。
また、過去半年以内に会社都合による離職を行っている企業は、トライアル雇用奨励金を利用できません。
・時間外労働、深夜労働、休日労働の割増賃金をきちんと支払う
時間外等の割増賃金を支払っていないと、トライアル雇用奨励金は支給されません。そこで、割増賃金を支払って、トライアル雇用奨励金を利用することが会社にとって得なのか否か検討する必要があります。例えば、本奨励金の支給額12万円に対し、追加で支払う割増賃金が15万円となるような場合も考えられます。このような事態にならないためにも、対象労働者の勤務時間はしっかり管理しましょう。
契約社員を正社員にしたらもらえる助成金 キャリアアッブ助成金(正規雇用等転換コース)
キャリアアップ助成金(正規雇用等転換コース)とは
キャリアアップ助成金とは、有期契約労働者、短時間労働者、派遣労働者等の、いわゆる非正規雇用の労働者の、企業内でのキャリアアップ等を促進するため、様々な取組みを実施した事業主に対して助成されるものです。
この助成金の対象には、正社員待遇を受けていない無期雇用労働者も含みます。
キャリアアップ助成金は、六つのコースに分かれています。
その中の一つである「正規雇用等転換コース」は、有期契約労働者の正規雇用等への転換、または派遣労働者の直接雇用化を行う事業主が利用できる助成金です。
有期契約労働者等の、より安定度の高い雇用形態への転換を通じたキャリアアップを目的としています。
簡単にいえば、国からお金をあげるから不安定な有期契約労働者や派遣労働者を、安定した正社員にしませんか。正社員にして6か月間継続して勤務したなら、1人当たり50万円支給しますよ、という助成金です。
この助成金は他の助成金と比べ、特別に教育訓練を行う必要もなく、雇用契約を変更するだけで支給要件を満たすことができます。
もし正社員化を検討しているなら、すぐに活用できるのです。
以前存在した「均衡待遇・正社員化推進奨励金」に比べ、1人当たりの支給額が増額となりました。
また、利用可能人数も増加しました。つまり、さらに使いやすい助成金に進化したのです。
ここからは、キャリアアップ助成金「正規雇用等転換コース」について、詳細な内容及び利用手順等を説明していきます。
キャリアアップ助成金(正規雇用等転換コース)の要件
キャリアアップ助成金(正規雇用等転換コース)は、有期契約労働者等を正規雇用労働者又は無期雇用労働者に転換した場合、もしくは直接雇用した場合に支給されます。
「正規雇用労働者」とは、期間の定めのない労働契約を締結する労働者で、その雇用する事業所の就業規則等に基づく長期雇用を前提とした待遇を受けている労働者を指します。
この中には短時間労働者又は派遣労働者のうち、期間の定めのない労働契約を締結する労働者で、雇用する当該事務所の正社員待遇を受けている人も含まれます。
無期雇用労働者との違いは、転換によって正社員待遇を受けるかどうかという点です。
本助成金の対象となる有期契約労働者等は、支給対象事業主に雇用される期間が通算して6か月以上の有期契約労働者、または支給対象事業主に雇用される期間が6か月以上の無期雇用労働者となります。
ただし、無期雇用に転換する場合は、雇用される期間が6か月以上3年未満の有期契約労働者等が対象となります。
また、対象となる労働者は以下の3つの要件を満たさなくてはなりません。
①正規雇用労働者として雇用することを前提として雇入れられた労働者ではない(有期実習型訓練により雇入れられた労働者を除きます)
②正規雇用労働者又は無期雇用労働者に転換した後、社会保険加入要件を満たす場合は社会保険の被保険者となっている(社会保険の適用事業所に雇用される場合に限ります)
③正規雇用労働者または無期雇用労働者に転換される場合、転換または直接雇用の前日から過去3年以内に、次のいずれかに該当している
・正規雇用労働者に転換または直接雇用される場合、当該事業主の事業所において正規雇用労働者または短時間正社員として雇用されたことがない
・無期雇用労働者に転換または直接雇用される場合、当該事業主の事業所において正規雇用労働者、短時間正社員または無期雇用労働者として雇用されたことがない
キャリアアップ助成金(正規雇用等転換コース)の支給額
キャリアアップ助成金(正規雇用等転換コース)では、実施する内容に応じて以下の金額が支給されます。
①有期→正規:1人あたり50万円(40万円)
②有期→無期:1人あたり20万円(15万円)
③無期→正規:1人あたり30万円(25万円)
ただし、以下のことに注意する必要があります。
・②の場合には基本給を転換前より5%以上上昇させる必要があります。
・カッコ内の金額は大企業に適用される助成額です。
・支給対象となるのは、1年度1事業所あたり15人までです。
また、以下の条件を満たすと助成金が加算されます。
・対象者が母子家庭の母、もしくは父子家庭の父の場合、1人あたり①10万円②5万円③5万円が加算されます。
・派遣労働者を正規雇用労働者として直接雇用する場合、1人当たり10万円加算されます。
キャリアアップ助成金(正規雇用等転換コース)の利用手順
キャリアアップ助成金(正規雇用等転換コース)を利用する場合にも、正しい手順で申請する必要があります。
手順を間違えると助成金は支給されませんので、手順はしっかりと把握しておいて下さい。
①キャリアアップ計画を作成・提出する
キャリアアップ計画とは、有期契約労働者等のキャリアアップに向けた取り組みを記載するものです。
有期契約者等のキャリアアップを、計画的に進めるため作成します。内容としては、対象者、目標、期間、目標を達成するために事業主が講ずる措置等を記載します。
キャリアアップ計画は予定を記載するものであり、随時変更ができるので安心してください。
なお、提出先は労働局又は公共職業安定所になります。
②労働局よりキャリアアップ計画書に受理印が押されたものが事業主宛に郵送されてくる
キャリアアップ計画提出から1か月程度すれば郵送されてきます。
③就業規則等に転換制度を規定する
対象労働者の種類により、次の3つのうちのいずれかの措置を制度として就業規則等に定める必要があります。
また、常時雇用する従業員が10名以上の事業所の場合、労働基準監督署に就業規則を届出する必要があります。
・有期契約労働者を正規雇用労働者または無期雇用労働者に転換すること
・無期雇用労働者を正規雇用労働者に転換すること
・派遣労働者を正規雇用労働者として直接雇用すること
④6か月以上在籍している有期契約労働者等で、正規雇用労働者等になることを希望する者に面接試験等を行い正規雇用労働者等に転換する
新たに労働条件通知書や雇用契約書を労働者に提示し、雇用契約を結びなおす必要があります。
ちなみに、6か月以上在籍していない有期契約労働者を、正規雇用労働者等に転換しても助成金の対象とはなりません。
⑤正規雇用等に転換後、6か月分の賃金を支払った日の翌日から2か月以内に支給申請を行う
支給申請には以下7つの書類が必要になります。
・管轄労働局長の確認を受けたキャリアアップ計画書の写し
・正規雇用転換コースを明示した労働協約または就業規則の写し
・雇用形態の転換後に、対象労働者が適用された労働条件が確認できる書類(労働協約または就業規則等)の写し
・雇用形態の転換前に、対象労働者が適用されていた労働条件が確認できる書類(労働協約または就業規則等)の写し
・対象労働者の転換前および転換後の労働条件通知書または雇用契約書の写し
・対象労働者の賃金台帳(転換前6か月および転換後6か月分)の写し
・対象労働者の出勤簿、タイムカード(転換前6か月および転換後6か月分)の写し
社員教育をしたらもらえる助成金 キャリアアップ助成金(人材育成コース)
キャリアアップ助成金(人材育成コース)とは
キャリアアップ助成金の「人材育成コース」は、有期契約労働者等に対して職業訓練を行う事業主が受給することが出来ます。
有期契約労働者等の、職業能力開発を通じたキャリアアップを目的としています。
簡単にいえば、正社員に比べて職業能力開発の機会が少ない有期契約労働者に対して教育訓練を行い、戦力アップを図ってください。
そうすれば、訓練費用を最大30万円までは国が支払います。
さらに、訓練時間1時間当たり800円支払うので、対象労働者への賃金支払の補填もできます、という助成金です。
この助成金を利用することで、すでに有期契約労働者に対して教育訓練を行っている企業では、費用の負担を軽減することが出来ます。
また、今まで有期契約労働者に対して教育訓練を行っていなかった企業では、有期契約労働者に対して教育訓練を行えるようになります。
さらに、新たに採用する有期契約労働者に、仕事の基礎を叩き込むといった利用方法も可能です。
ここからは、キャリアアップ助成金の「人材育成コース」の、詳細な内容及び利用手順等を説明していきます。
キャリアアップ助成金(人材育成コース)の要件
キャリアアップ助成金(人材育成コース)を受給するためには、以下の要件を全て満たしていなければなりません。
①雇用保険適用事業所の事業主である。
②雇用保険適用事業所ごとに、キャリアアップ管理者を置いている。中小企業の場合、一般的には代表取締役がキャリアアップ管理者になります。
③雇用保険適用事業所ごとにキャリアアップ計画を作成し、管轄労働局長の受給資格の認定を受けた事業主である。
④支給申請時点において、対象労働者に対し事業主都合による解雇をしていない。
⑤有期契約労働者等を雇用している、または新たに雇入れる事業主である。
⑥対象労働者に対し職業訓練計画を作成し、管轄労働局長の受給資格認定を受けた事業主である。
⑦次の3つの書類を整備している事業主である。
・対象労働者に係る職業訓練等の実施状況を明らかにする書類
・職業訓練等に要する経費等の負担の状況を明らかにする書類
・対象労働者に対する賃金の支払いの状況を明らかにする書類
⑧職業訓練計画を実施した事業所において、雇用保険被保険者を事業主の都合により解雇等していない事業主である。対象となる期間は、職業訓練計画を提出した日の前日から起算して6か月前の日から、訓練に係るキャリアアップ助成金の支給申請書の提出日までの間となります。
キャリアアップ助成金(人材育成コース)の支給額
キャリアアップ助成金(人材育成コース)は、Off‐JT、OJTにより支給される金額が異なります。
Off‐JTの場合は、賃金助成、訓練経費助成の2種類が適用されます。
賃金助成の場合、訓練1時間当たり500円(800円)が支給されます。訓練経費助成の場合、実費相当額が20万円(30万円)を上限として支給されます。
OJTの場合、訓練実施助成の1種類となり、支給額は1時間当たり700円(700円)です。
括弧内は中小企業への支給額となります。
キャリアアップ助成金(人材育成コース)の利用手順
キャリアアップ助成金(人材育成コース)も、利用手順を一つでも間違えると、その他の要件をいくら満たしたとしても1円も支給されません。そのため、利用手順は事前にしっかりと把握しておく必要があります。
キャリアアップ助成金の対象となる訓練は、一般職業訓練、有期実習型訓練の2種類があり、それぞれ手順が異なるので注意が必要です。
〈一般職業訓練〉
一般職業型訓練は、1コース当たりの訓練時間数が20時間以上である必要があります。また、趣味、教養と区別のつかない訓練を除いたものが対象となります。
①キャリアアップ計画の作成・提出
訓練計画開始日の前日から起算して1か月前までに、キャリアアップ計画を管轄労働局長に提出する必要があります。
②訓練計画届の作成・提出
訓練計画開始日の前日から起算して1か月前までに、訓練計画届を管轄労働局長に提出する必要があります
③支給申請
訓練終了日の翌日から起算して2か月以内に、支給申請を行う必要があります。
〈有期実習型訓練〉
有期実習型訓練はOff‐JTとOJTを組み合わせて実施する職業訓練です。
①キャリアアップ計画の作成・提出
訓練計画開始日の前日から起算して1か月前までに、キャリアアップ計画を管轄労働局長に提出する必要があります。
②訓練計画届の作成・提出
訓練計画開始日の前日から起算して1か月前までに、訓練計画届を管轄労働局長に提出する必要があります
③ジョブ・カードの作成
訓練開始までにジョブ・カードを作成する必要があります。ジョブ・カードとは、簡単に言うと履歴書よりも詳しい自己PRのシートです。ハローワークやジョブ・カードセンター等に所属する、登録キャリア・コンサルタントと相談しながら作成・交付を受けます。
④支給申請
訓練終了日の翌日から起算して2か月以内に、支給申請を行う必要があります。
キャリア形成促進助成金
キャリア形成促進助成金とは
キャリア形成促進助成金は、職業訓練などを実施する事業主に対して支給されます。
訓練経費や訓練中の賃金を助成し、労働者のキャリア形成を効果的に促進することを目的としています。
簡単にいえば、正社員に対して教育訓練を行って、戦力アップを図ってみませんか。訓練費用の一部は国が支払います。
さらに、訓練時間1時間当たりいくらか支払うので、対象労働者への賃金支払の補填もできます、という助成金です。
キャリア形成促進助成金を活用することで、以前から正社員に対して教育訓練を行っている企業では、費用の軽減化が図れます。
また、今まで全く正社員に対して教育訓練を行っていなかった企業にとっては、助成金を利用することで教育訓練を行えるようになります。
ほとんどの企業にとって、メリットがある助成金なのです。
ここからは、キャリア形成促進助成金の詳細な内容や利用手順を解説していきます。
訓練の種類について
キャリア形成促進助成金で対象となる訓練は、大きく分けると以下の3つの種類に分かれます。
・政策課題対応型訓練(若年人材育成コース)
採用後5年以内かつ35歳未満の、若年労働者に対する職業訓練のことをいいます。
・政策課題対応型訓練(その他のコース)
政策課題対応型訓練には若年人材育成コースの他に、成長分野等人材育成コース、グローバル人材育成コース、熟練技能育成・承継コース、認定実習併用職業訓練コース、自発的職業能力開発コース等に分かれています。
しかし、一般的に多く利用されるのは若年人材育成コースです。
・一般型訓練
政策課題対応型訓練以外の職業訓練のことをいいます。
キャリア形成促進助成金の要件
キャリア形成促進助成金を受給する為には、以下の要件を満たす必要があります。
①訓練対象となる労働者を従来から雇用している
ただし、認定実習併用職業訓練コースについては、新たに雇入れた労働者が対象となります。
②次の3つの要件を満たす、事業内職業能力開発計画と年間職業能力開発計画を策定して、管轄の労働局長に提出する
・1コースの訓練時間数が20時間以上である
・職務に関連した、専門的な知識や技能の習得をさせるための訓練である
・一般型訓練以外のコースについては実施計画書を策定している
キャリア形成促進助成金の支給額
政策課題対応型訓練と一般型訓練では助成金額が異なります。
政策改題対応型訓練を実施した場合、Off‐JT、OJTにより支給される金額が異なります。
Off‐JTを実施した場合、訓練経費助成、賃金助成が支給されます。
訓練経費助成は実費相当額の2分の1、賃金助成は1時間あたり800円支給されます。
OJTを実施した場合は、訓練実施助成のみで、1時間当たり600円支給されます。
一般型訓練の場合Off‐JTに対する支給のみとなります。
訓練経費助成が実費相当額の3分の1、賃金助成が1時間当たり400円支給されます。
ただし、1人1コースあたりの訓練時間が300時間未満の場合は5万円、300時間以上600時間未満の場合は10万円、600時間以上の場合は20万円が訓練経費助成の限度となります。
また、1人あたりの賃金助成時間数は、1コースにつき原則1200時間を限度とします。
また、認定実習併用型職業訓練でOJTを実施する場合は、1人1コース当たり40万8,000円が限度となります。
キャリア形成促進助成金の利用手順
キャリア形成促進助成金も、手順を守らなければ支給されません。手順をしっかり把握し、漏れ等のないようにしておいて下さい。
①事業内職業能力開発計画と訓練実施計画届の作成・提出
職業訓練等の実施の1か月前までに、事業内職業能力開発計画と訓練実施計画届を管轄の労働局に提出する必要があります。
②支給申請
職業訓練が終了した日の翌日から起算して2か月以内に、支給申請を行う必要があります。
60歳以上の人を雇うことでもらえる助成金 特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者雇用開発助成金)
特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者雇用開発助成金)とは
特定求職者雇用開発助成金とは、高年齢者(60歳以上65歳未満)や障害者など、就職が特に困難な方をハローワークの紹介により、継続して雇用する労働者として雇い入れる事業主が助成される助成金です。
賃金の一部を助成することで、これらの方の雇用機会の増大を図ることを目的としています。
簡単にいえば、高年齢者(60歳以上65歳未満)や母子家庭の母、障害者を、正社員またはパートタイマーとして雇用してください。
雇用してくれれば、助成金を支給します、という物です。
この助成金は、経験豊富なベテランを雇い入れたい企業にとって、とても有効な助成金といえます。
さらに、女性を雇用したいと考えている企業にとっても、非常に効果的です。
また、障害者を雇用することで社会に貢献したいと考えている企業にとっても、大きな助けとなるでしょう。
ここからは、特定就職困難者雇用開発助成金の詳細な内容や利用手順等を解説していきたいと思います。
特定就職困難者雇用開発助成金の主な要件
特定就職困難者雇用開発助成金を利用する為には、以下の要件を見たす必要があります。
①対象労働者が雇い入れられた日における年齢が65歳未満である。
②ハローワークの紹介により、雇用保険の一般被保険者として雇い入れる。
③助成金の受給終了後も引き続き雇用する。
④ハローワークの紹介の前に雇用の予定がない。
⑤雇入れ日の前日から過去3年間に、雇入れられる事業所で働いたことがない。
⑥対象労働者がハローワークからの紹介を受けた日において失業している。(例えば、前職において残っている有給休暇を消化しているときにハローワークで紹介を受けた場合、本助成金の対象にはなりません)
⑦助成金の支給対象期間の途中や支給決定までに、対象労働者を事業主の都合で解雇しない。(勧奨退職を含む)
⑧対象労働者の雇入れ日の前後6か月間に、事業主の都合による従業員の解雇をしていない。(勧奨退職を含む)⑨倒産や解雇など特定受給資格者となる離職理由の被保険者数が、対象労働者の雇入れ日における被保険者の6%を超えていない。(特定受給資格者となる離職理由の被保険者が3人の場合を除く)
⑩紹介時の労働条件と異なる条件で雇入れした場合、対象労働者に対し労働条件に関する不利益又は違法行為がなく、対象労働者から求人条件が異なることについて申し出がない。
⑪前年度より前のいずれかの年度における労働保険料を滞納していない。
特定就職困難者雇用開発助成金の支給額
特定就職困難者雇用開発助成金は、雇い入れる方の状況により支給される金額が異なります。
また、雇用する形態により支給される金額が異なります。
対象労働者を正社員として雇用する場合、高年齢者や母子家庭の母であれば1年間で90万円、身体・知的障害者であれば1年半で135万円、重度障害者であれば2年で240万円が支給されます。
また、短時間労働者として雇い入れる場合は、高齢者や母子家庭の母であれば1年間で60万円、障害者であれば1年半で90万円が支給されます。
短時間労働者とは、1週間の所定労働時間が20時間以上、30時間未満の労働者を指します。
ただし、この金額は中小企業が受取れる金額で、大企業の場合は金額が少なくなります。
また、助成金は起算日から6ヶ月で区切った期間ごとに支給されます。
特定就職困難者雇用開発助成金の利用手順
①ハローワークから対象労働者の紹介を受ける
※求人誌やインターネットを通じて採用した人は、助成金の対象とならないので注意して下さい。
②対象労働者を雇い入れる
③対象労働者を事業所で勤務させる
④支給申請期間内に支給申請害を管轄ハローワークに提出する
※支給申請期間は、各支給対象期の末日の翌日から2か月以内となります。支給対象期(起算日から6か月ごとに区切った期間)ごとに2〜4回に分けて支給申請を行ってください。
繰り返しになりますが、特定就職困難者雇用開発助成金も利用手順を間違えると支給されません。
ミスやモレの無いよう、利用手順は事前にしっかりと把握しておいてください。
特定求職者雇用開発助成金(高年齢者雇用開発特別奨励金)
高年齢者雇用開発特別奨励金は、特定求職者雇用開発助成金の制度のうちの一つです。
65歳以上の離職者を、ハローワークの紹介により、確実に1年以上継続して雇用する事業主が助成されます。
高年齢者が経験等を活かし、社会で活躍することの支援を目的としています。
簡単にいえば、65歳以上の高年齢者を、正社員またはパートタイマーとして雇用して下さい。
そうすれば、賃金の一部を国が支給しますという助成金です。
この助成金は、経験豊富なベテランを雇い入れたい企業にとって、大変有用な助成金となるでしょう。
高年齢者雇用開発特別奨励金の支給要件については、「65歳以上であること」「対象労働者について、雇用保険の被保険者資格を喪失した日以前1年間に被保険者期間が6月以上あり、雇用保険の被保険者資格を喪失した離職日の翌日から3年後の日までに雇入れられること」この2点以外は、特定就職困難者雇用開発助成金とほぼ同じとなります。
また、利用手順も特定就職困難者雇用開発助成金とほぼ同じです。
まずは、ハローワークに求人申込を行うのが原則となります。
そして、高年齢者雇用開発特別奨励金の支給額は雇い入れる形態により異なります。
正社員であれば1年間で90万円、パートタイマーであれば1年間で60万円支給されます。
なお、大企業においては金額が少なくなるので注意が必要です。
パートタイマーのキャリアアップでもらえる助成金 キャリアアップ助成金
キャリアアップ助成金とは
キャリアアップ助成金とは、非正規雇用の労働者の企業内でのキャリアアップ等を促進するため、正規雇用への転換や人材育成、処遇改善などの取組を実施する事業主が活用できる助成金です。
非正規雇用の労働者とは、有期契約労働者、短時間労働者、派遣労働者などが該当します。
キャリアアップ助成金は、全部で六つのコースに分けられており、パートタイマーの方については要件を満たす限り、全てのコースが対象となります。
キャリアアップ助成金の種類
キャリアアップ助成金は、以下の六つのコースに分かれます。
・正規雇用等転換コース
・人材育成コース
・処遇改善コース
・健康管理コース
・短時間正社員コース
・短時間労働者の週所定労働時間延長コース
なお、正規雇用転換コースと人材育成コースについては既に解説していますので、ここでは省きます。
支給対象事業主について(全コース共通)
キャリアアップ助成金を受給するためには、次の要件を満たす必要があります。
①雇用保険適用事業所の事業主であること
②雇用保険適用事業所ごとに、キャリアアップ管理者を置いていること
③雇用保険適用事業所ごとに対象労働者に対しキャリアアップ計画を作成し、管轄労働局長の受給資格の認定を受けた事業主であること
④支給申請時点において、対象労働者について事業主都合による解雇をしていないこと
ただし、人材育成コースについては、キャリアアップ計画の確認後、訓練計画届を作成し管轄労働局長の確認を受ける必要があります。
また、キャリアアップ計画(訓練計画届)については、コース実施の前日から起算して1か月前までに管轄労働局またはハローワークに提出しなくてはなりません。
支給申請の流れ(全コース共通)
受給までの流れは、「人材育成コース」と「人材育成コース以外」で異なります。それぞれの流れを、簡単に紹介いたします。
人材育成コース
①キャリアアップ計画の作成、提出
②訓練計画届の作成
③訓練計画届の提出
④訓練実施
⑤支給申請
人材育成コース以外
①キャリアアップ計画の作成、提出
②実施
③支給申請
キャリアアップ計画や訓練計画届は、労働局やハローワークの確認が入ります。また、訓練計画届の作成においては、ジョブ・カードセンターが支援を行ってくれます。
キャリアアップ計画について(全コース共通)
キャリアアップ計画作成においては、次のことに注意する必要があります。
なお、キャリアアップ計画は、随時変更することが出来ますが、事前の届出が必要です。
・キャリアアップ計画は、3年〜5年程度の期間とすること
・キャリアアップ管理者を決めること
・「有期契約労働者等のキャリアアップに関するガイドライン」に沿って、おおまかな取り組みや全体の流れを決めること
・計画対象者、目標、期間、事業主が講ずる措置などを記載すること
・計画の対象となる労働者の意見が反映されるよう、労働組合等の労働者の代表から意見を聴くこと
キャリアアップ助成金の概要と支給額
・処遇改善コース
有期契約労働者等の、賃金水準向上を図った事業主が支給対象となります。
有期契約労働者等の、処遇改善を通じたキャリアアップを目的としています。
すべての有期契約労働者等の基本給の賃金テーブルを改定し、3%以上増額させた場合に助成されます。
支給額は1人当たり1万円です。
さらに、「職務評価」の手法を活用した場合、1事業所当たり、10万円が加算されます。
ただし、1年度1事業所当たり100人を限度となります。
・健康管理コース
有期契約労働者等に対して、法定外の健康診断制度を導入する事業主が支給対象となります。
健康管理体制の強化を通じ、有期契約労働者等のキャリアアップを目的としています。
有期契約労働者等を対象とする「法定外の健康診断制度」を新たに規定し、4人以上に実施した場合に助成されます。
支給額は1事業所当たり40万円です。ただし、一事業所当たり1回限りの利用になります。
・短時間正社員コース
短時間正社員への転換や、短時間正社員を新たに雇い入れる事業主が支給対象となります。
主にワーク・ライフ・バランスの観点から、正規雇用労働者を短時間正社員に転換するケースや、短時間労働者を短時間正社員に転換するケースが想定されています。
短時間正社員制度を規定し、雇用する労働者を短時間正社員に転換する、または短時間正社員を新規で雇い入れた場合に助成されます。
支給額は1人当たり30万円です。対象者が母子家庭の母等または父子家庭の父の場合、1人当たり10万円加算します。
ただし、短時間労働者の週所定労働時間延長コースの人数と合計し、1年度1事業所当たり10人が上限となります。
ちなみに短時間正社員とは、他の正規型のフルタイムの労働者と比べて、所定労働時間が短い正規型の労働者を指します。
期間の定めのない労働契約を締結し、時間当たりの基本給及び賞与・退職金等の算定方法等が、フルタイムの正規労働者と同等であることが条件となります。
・短時間労働者の週所定労働時間延長コース
週所定労働時間が25時間未満の有期契約労働者等について、週所定労働時間を30時間以上に延長した事業主が支給対象となります。
社会保険適用を受けることのできる労働条件の確保を通じ、短時間労働者のキャリアアップを目的としています。
週所定労働時間が25時間未満の有期契約労働者等を、週所定労働時間30時間以上に延長した場合に助成されます。
ただし、週所定労働時間を30時間以上に延長した後、社会保険の被保険者としなくてはなりません。
支給額は1人当たり10万円です。短時間正社員コースの人数と合計し、1年度1事業所当たり10人が上限となります。
なお、全てのコースにおいて、大企業においては金額が少なくなるので注意して下さい。
キャリアアップ助成金の支給申請方法
基準日の翌日から起算して2か月以内に、支給申請書に必要な書類を添えて、管轄労働局またはハローワークヘ支給申請してください。なお、基準日は次のとおりです。
処遇改善コース:賃金テーブルの増額改訂後、6か月分の賃金を支払った日
健康管理コース:延べ4人以上受診させた日
短時間正社員コース:短時間正社員に転換・新規雇入れ後、6か月分の賃金を支払った日
短時間労働者の週所定労働時間延長コース:労働時間を延長した後、6か月分の賃金を支払った日
介護業界の労働環境を向上することでもらえる助成金 中小企業労働環境向上助成金
ここからは、介護業界で利用できる助成金として「中小企業労働環境向上助成金」について紹介します。
以前は「介護労働環境向上奨励金」という名称でしたが、対象を中小企業主に限定し、内容を一部変更の上、「中小企業労働環境向上助成金」に統合・移行されました。
中小企業労働環境向上助成金の内容は、大きく分けて次の二種類に分けることが出来ます。
【雇用管理制度助成】
中小事業主が労働者の労働環境の向上を図るため、雇用管理改善につながる制度等を導入し、適切に実施した場合に助成されます。導入した制度に応じた定額(30万円または40万円)が支給されます。
【介護福祉機器等助成】
介護関連事業主が、介護労働者の身体的負担を軽減するため新たに介護福祉機器を導入し、適切な運用を行い労働環境の改善がみられた場合に助成されます。介護福祉機器の導入費用の1/2(上限300万円)が支給されます。
それでは、それぞれの制度ごとに、支給要件、支給金額、申請の流れについて解説していきましょう。
雇用管理制度助成について
支給要件
以下の全てにあてはまる事業主が対象となります。
・雇用保険の適用事業の中小企業事業主であること
※中小企業事業主…介護の事業所の場合、常用労働者100人以下、もしくは資本金5.000万円以下のいずれかに該当する事業主となります。
・重点分野等の事業を行う事業主であること
・事業所ごとに雇用管理責任者を選任し周知すること
・過去に当該助成金を受給している場合、最後の受給決定日の翌日から3年が経過していること
・計画初日の前日から遡って6か月間、解雇をしていないこと
・計画初日の前日から遡って6か月以内の特定受給資格者の数が、計画提出日における雇用保険被保険者数の6%を超えていないこと
・介護サービスの提供を業として行う事業主であること
中小企業の介護事業所であれば、ほとんどの方が当てはまるかと思います。ポイントとなるのは、、、
・雇用管理責任者を選任すること
・計画初日の前日から6か月以内に解雇等を行っていないこと
この2つです。雇用管理責任者は、雇用管理の担当者のことを指します。あらかじめ事業所ごとに選任・周知を行ってください。また、解雇に関しては事前に必ず確認しておいてください。
さらにもう一つ条件があります。
今から解説するいずれかの制度を就業規則に新たに定め、1人以上の通常の労働者に適用させる必要があります。ただし、既に制度化している場合は対象となりません。
どの制度を導入するにしても、就業規則に合理的な条件を明示しなくてはなりません。そして明示する以上は、その通りに実施する義務が生じます。
そのため、計画期間内に間違いなく実施できるよう、スケジュールを組んでおく必要もあります。
・評価・処遇制度
キャリアパス制度、賃金体系制度等の人事制度の導入を行う場合に該当します。
賃金制度の場合は、賃金総額が低下しないことが条件となります。
「人事制度を設けて、従業員の定着率を上げたい!」「賃金を体系化して、従業員にも説明できるような制度を作りたい!」といった会社はこの制度を導入すると良いでしょう。
・研修体系制度
新入社員研修、管理職研修等の、研修制度を行う場合に該当します。研修は、以下の内容を満たさなければなりません。
・労働関係法令等で実施が義務付けられていないものを含むこと
・Off‐JTであること
・1人につき10時間以上の訓練であること
・費用は全額事業主負担であること
・教育訓練期間中の賃金を、減額せずに支払うこと
介護の業界も競争が激化しており、社員教育の重要性が高まっています。
より高い意識・技能をもった人材を会社で育てていくために、教育制度を整えたいならこの制度を導入すると良いでしょう。
とはいえ、中小企業にはややハードルが高いかもしれません。なぜなら、一度制度化した以上、基準を満たしたもの全てに研修を受けさせる必要が生まれます。
利用する場合、長期的な視点も踏まえ慎重に条件を検討してください。
・健康づくり制度
法定の健康診断以外で、以下のいずれかの健康診断制度を導入する場合に該当します。
・腰痛健康診断
・B型.C型肝炎検査
・インフルエンザ予防接種
・結核検査
・検便
・メンタルヘルス相談(専門家によるものに限る)
健康診断費用に関しては、半額以上を事業主が負担する必要があります。
そのため、研修体系制度と同様、制度化にあたっては慎重な設計をする必要があります。
最近では、労働者の安全を守る義務に注目が集まるようになりました。
身体に負担のかかることの多い介護の業界ではなおさらです。
その対策の一つとして、助成金を活用し健康診断制度の導入を検討するのもよいかと思います。
支給金額
評価処遇制度の導入:40万円
研修体系制度の導入:30万円
健康づくり制度の導入:30万円
ただし、複数の制度を導入した場合も金額は変わりません。
申請の流れ
①「雇用管理制度整備計画」の作成・提出
各制度の導入を盛り込んだ「雇用管理制度整備計画書」を作成し、必要書類を添えて管轄労働局に提出します。
計画期間は「3か月〜1年」となります。期間内に制度の導入・実施を行う必要がありますので、無理のないかたちで計画してください。
計画の提出期間は、最初に雇用管理制度を導入する月の初日からさかのぼって、6か月前〜1か月前となっています。
たとえば、平成29年4月10日に制度を導入する場合、平成29年4月1日が「計画開始日」となります。
その「6か月前〜1か月前」なので、平成28年10月1日〜平成29年2月28日の問に計画を提出することになるでしょう。
あらかじめスケジュールを確認し、間違いのないように行ってください。
②認定を受けた雇用管理制度の導入
認定を受けた雇用管理制度を就業規則に新たに定め、必ず制度の適用前に労働基準監督署に届出を行います。さらに、労働者の方に周知してください。計画開始日は、「就業規則を労働基準監督署に届け出た月の初日」となります。
③雇用管理制度の実施
導入した雇用管理制度を、実際に労働者に対し実施します。通常の労働者1名以上に適用することが、支給の条件となります。なお、支給申請時には制度の実施状況を確認されます。そのため、実施内容のわかる書類を用意する必要があります。
④計画期間終了後2か月以内に支給申請
計画期間終了後、2か月以内に「雇用管理制度等助成支給申請書」に「導入した制度の内容が確認できる書類」等を添えて管轄労働局に提出します。
⑤助成金の支給
支給申請書提出後4か月〜8か月後に指定口座に支給されます。
介護福祉機器等助成について
支給要件
以下の全てにあてはまる事業主が対象となります。
・雇用保険の適用事業の中小企業事業主であること
※中小企業事業主…介護の事業所の場合、常用労働者100人以下、もしくは資本金5.000万円以下のいずれかに該当する事業主となります。
・介護福祉機器等導入事業所において、介護サービスの提供を業として行う事業主であること
・事業所ごとに雇用管理責任者を選任・周知すること
・過去に介護福祉機器等の助成金を受給している場合、最後の受給決定日の翌日から3年が経過していること(支給額が300万円未満で前回の支給決定日を過ぎている場合は、300万円に達するまでの分は申請できます)
・介護福祉機器等導入事業所において、計画初日の前日から遡って6か月間解雇をしていないこと
・介護福祉機器等導入事業所において、計画初日の前日から遡って6か月以内の特定受給資格者の数が、計画提出日における雇用保険被保険者数の6%を超えていないこと
前提条件として、介護福祉機器等を導入する事業所において、介護サービスを行っていることが必要です。まず、導入事業所が介護サービスを行っていることを確認してください。また解雇者のチェックは導入事業所単位となります。その他の注意点は、前述の雇用管理制度助成と同様です。
対象となる介護福祉機器は以下に該当し、1品10万円以上のものです。
・移動用リフト(立位補助機を含む)
・自動車用車いすリフト(福祉車両の場合は、本体を除いたリフト部分のみ)
・座面昇降機能付車いす
・特殊浴槽(リフトと共に稼働するもの、側面が開閉可能なもの)
・ストレッチャー
・自動排泄処理機
・昇降装置(人の移動に使用するものに限る)
・車いす体重計
さらに、支給の対象となる介護福祉機器と同時に購入した、必要不可欠な付属品を含めることができます。また、場合によっては支給の対象外となるケースもあります。計画を提出する前に、事前に管轄労働局に確認した方が無難でしょう。
支給金額
以下の合計額(税込)の1/2の金額が支給されます。ただし、上限は300万円です。
・介護福祉機器の導入費用
・保守契約費
・機器の使用を徹底させるための研修費
・介護技術に関する身体的負担軽減を図るための研修費
導入費用については、介護福祉機器を賃借した場合も支給対象となります。ただし、計画期間内に賃借した費用のみ支給対象となります。分割で支払う場合も、支給申請の日までに支払いが完了した分のみが支給対象となります。保守契約に関しても、計画期間を超えて締結した場合は、計画期間内に相当する額のみが支給対象となります。
また、研修を外部に委託する場合は、一定の資格を有する者を講師としないと謝金が支給対象となりません。必ず事前に確認を行ってください。
申請の流れ
①「導入・運用計画」の作成・提出
介護福祉機器を導入・運用するスケジュールを盛り込んだ「導入・運用計画」を作成し、添付書類を添えて管轄労働局に提出します。計画期間、計画の提出期間については「雇用管理制度助成」と同様となります。なお、計画開始日は、最初に介護福祉機器を導入する月の初日となります。
また、導入効果の把握のためにアンケートを行う必要があります。機器を導入する場合と研修を行う場合で、アンケートの内容が異なります。
調査内容
機器を導入する場合:身体的負担が大きいと感じている職員数の改善率
研修を行う場合:身体的負担軽減につながる作業方法が徹底された職員数の改善率
調査対象者
機器を導入する場合:機器の導入部署、またはそこに移動予定の雇用保険被保険者
研修を導入する場合:導入事業所全体の介護業務に従事する雇用保険被保険者
支給要件
それぞれの費用ごとに改善率60%以上
改善率とは、導入前のアンケートで身体的負担が大きいと感じていると答えた職員のうち、導入後のアンケートで身体的負担が減少した、作業方法等が改善されたと答えた人の割合です。この改善率が、それぞれ60%以上でないと、助成金の支給を受けることができません。
また、アンケートの回収率は80%以上が必要です。あらかじめ労働者へアナウンスをしておくとよいでしょう。
②導入前アンケートの実施
「導入前アンケート」を行います。計画期間内かつ制度の導入前に行ってください。
③介護福祉機器の導入・運用
認定を受けた介護福祉機器の導入・運用を行います。関係費用の領収書・請求書・納品書等は、提出する必要があるため必ず保管してください。また機器の販売者に「介護福祉機器販売・賃貸証明書」へ記入・押印をもらうのも忘れないようにしてください。
④介護福祉機器の導入効果の把握
導入後のアンケートを行います。回収率80%以上。改善率60%以上となっているか必ず確認して下さい。下回っている場合は不支給となってしまいます。
⑤計画期間終了後2か月以内に支給申請
計画期間終了後2か月以内に「介護福祉機器等助成支給申請害」に「かかった費用のわかる領収書等」「介護福祉機器販売・賃貸証明書」「アンケート用紙」など、必要書類を添えて管轄労働局に提出してください。
⑥助成金の支給
支給申請害提出後4か月〜8か月後に指定口座に支給されます。
いかがでしたでしょうか。あなたにも活用できそうな助成金があったのではないでしょうか。
助成金は原則として返済不要の、雑収入として扱われます。
きっとあなたのビジネスを前進させる役に立つことと思います。ぜひ活用してみて下さいね。